ドジャースの大谷翔平(29)は4日(日本時間5日)、本拠地で行われたブレーブス戦で3回の第2打席でライトスタンドへ8号ソロを放り込み、デーブ・ロバーツ監督(51)を抜いてドジャースの日本出身選手の最多本塁打記録を更新した。大谷は5打数3安打2打点で11―2の圧勝に貢献した。試合後の大谷の囲み取材にロバーツ監督が前日にプレゼントされたポルシェのミニカーを持ってサプライズ登場して盛り上がったが、実は、この本塁打は、もう一つの約束を果たす願いが込められたものだった。

 ポルシェのミニチュアカーをプレゼント

 2人にとってのメモリアルアーチは2−0で迎えた3回に飛び出した。その回の先頭打者だった大谷は、ブレーブスの右腕ブライス・エルダーがインハイに投じた90.2マイル(約145キロ)をブレずに上から捉えた。打球はライトスタンドの中段にまで届いた。
ほおを膨らませて打球を見送った大谷は笑顔でダイヤモンドを一蹴。ベンチ前で打った瞬間から大はしゃぎだった満面の笑みのロバーツ監督と両手でハイタッチ。さらにベンチ内に戻ると、もう一度、監督とハイタッチを繰り返した。6試合、30打席ぶりの今季8号はロバーツ監督の持つド軍での日本出身選手の年間最多本塁打記録を抜く一発。ロバーツ監督の尋常ではない喜びようも無理はない。大谷は4回にもレフト前へタイムリーを放ち、猛打賞でチームの圧勝に貢献した。
サプライズが待ち受けていたのは試合後だ。
大谷が囲み取材を受け、並んでいたロバーツ監督の記録を6試合かけてようやく抜いたことに「スッキリしました」などと答えていると、そこに突然、ロバーツ監督が「Excuse me!」と言いながら、前日に大谷からプレゼントされたポルシェのミニカーを持ってサプライズ登場。
「ショウヘイ、君に“おめでとう”、“ありがとう”を伝えたかったんだよ。これが私の車だ。違いとしては、ジョー・ケリーにプレゼントした車(ポルシェ)は、私のオフィスには入らないってこと。この車は、私のデスクの上に置いておくよ」
得意のジョークで大谷と記者団を大爆笑させた。
大谷は、ドジャース入団時に背番号「17」を譲ってくれたセットアッパーのケリーに本物のポルシェをお返しにプレゼントして、度肝を抜いたが、ロバーツ監督には、ユーモアをこめて、そのミニカーを贈った。美人レポーターとして知られるスポーツネットLAのキルステン・ワトソンさんのアイデアだったそうで、大谷は「車が欲しいと言っていたので喜んでもらってうれしい。笑ってもらうのが好きなので、今後また何かあればやりたい」と、第二弾を準備していることを約束。
記者から「本物の車をプレゼントすることは?」と聞かれ「ワールドシリーズに勝てたら考えます」とうまく切り返した。
大谷は「監督の記録を抜く」という約束を果たしたが、実は、この本塁打は、もうひとつの約束を果たすものでもあった。地元紙のオレンジカウンティレジスターが「この本塁打はオフシーズンの約束を守り続けるものだった」と紹介したもの。

 先発したエースのタイラー・グラスノーは、昨年オフにレイズからトレードでドジャースに移籍したが、その際、同時に5年総額1億3650万ドル(約209億円)での契約延長にサインした。その交渉の際に先にドジャースと10年7億ドル(約1064億円)の契約を結んでいた大谷からのビデオメッセージを見せられたという。
「あなたのために何本かの本塁打を打てるよう願っています」
大谷はそうグラスノーに約束。
実績のある右腕がドジャースと長い契約を結ぶことを後押ししたという。グラスノーは、2度のMVPを獲得した二刀流スターのメッセージにも背中を押されて、ドジャースと5年の延長契約を結んだ。
大谷は、その約束を守り、この日の8号がグラスノーの先発試合で3本目となる援護弾。同紙によると、7回2失点で6勝目をあげたグラスノーは、大谷の8号&タイムリーを含む大量援護をもらったことについて、「素晴らしい。投手にとって援護のあるオフェンスを持つことは確かにスペシャルなこと。私が投げる試合ではドジャースが10得点かそのくらいを取っていると思う。とても良い気分になれるのは確かだ」と語ったという。
また同紙は、「大谷は、得点圏打率が低いという苦闘から逃れ始めている。3安打を放ち、前日のブレーブス戦の10回に放った同点タイムリーに加え、この日には、4回にタイムリーを打った」と続け、一時、1割を切っていた得点圏打率が.225まで回復してきたことを評価している。大谷は5日(日本時間6日)のブレーブス戦にも「2番・DH」でスタメンに名を連ねた。