AFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝第2戦が25日(日本時間26日)、敵地・UAE(アラブ首長国連邦)で行われ、横浜F・マリノスが1−5でアル・アインに大敗。ホームで逆転勝ちした11日の初戦との合計スコア3−6で悲願のアジア制覇を逃した。前半34分にVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)で判定が覆り、アル・アインに与えられたPKを決められて0−2とされると、1点を返した後の前半終了間際にはGKポープ・ウィリアム(29)が一発退場。後半に3ゴールを奪われて力尽きた。試合後、ハリー・キューウェル監督(45)はレフェリーのジャッジに対して「試合を崩された」と激怒した。

 「ショッキング」「(判定が)ひどかった」と発言も

 指揮官だけでなく、通訳の声もかれていた。
アル・アインに喫した大敗とともに、アジア制覇の悲願を打ち砕かれた直後のフラッシュインタビュー。マリノスのキューウェル監督の怒りに呼応するように、松崎裕通訳(44)が絞り出すかすれ声のボルテージも上がっていった。
「選手たちは90分間を通して、本当によく戦ってくれた。ただ、レフェリーによってかなり(試合を)崩されたのは事実だ」
松崎通訳はあえて訳さなかったが、指揮官の言葉には「ショッキング」や「ひどかった」といった意味の英語も含まれていた。

 スタンドのほとんどが白装束で埋め尽くされた、敵地ハッザーア・ビンザイード・スタジアム。大歓声に対して大声をあげ続けたキューウェル監督の怒りは、ウズベキスタンのイルギス・タンタシェフ主審に向けられていた。
ホームの横浜国際総合競技場で11日に行われた第1戦でマリノスが2−1の逆転勝利を収め、クラブ史上初のACL制覇に王手をかけて迎えた第2戦。前半8分にアル・アインに先制され、2戦合計スコアを2−2とされて迎えた同29分だった。
先制点を決めていたアル・アインのFWソフィアン・ラヒミが、マリノスの最終ラインの裏へ抜け出してペナルティーエリア内へ侵入。縦パスを収めようとした直後に、追走してきたマリノスのセンターバック、畠中槙之輔(28)と接触して倒れた。
タンタシェフ主審は当初、シミュレーションがあったとしてラヒミにイエローカードを提示した。しかし、直後にVARを務める中国のフー・ミン審判員が介入。ピッチ外のモニターエリアへ足を運び、OFR(オンフィールド・レビュー)を実施した同主審は畠中のファウルがあったと判定を覆し、ラヒミへのイエローカードを取り消した。
与えられたPKをFWアレハンドロ・ロメロが、ゴール右隅へしっかりと決める。コースを読んでダイブしたマリノスの守護神、ウィリアムが懸命に伸ばした左手もわずかに届かない。ゴールネットが揺れた瞬間に、2戦合計スコアで2−3と逆転された。
マリノスも同40分にFWヤン・マテウス(25)がゴールを決めて、1−2と1点差に追い上げるとともに合計スコアを3−3とした。しかし、10分が表示された前半アディショナルタイムの最後に、状況を一変させる場面が訪れた。
再びマリノスゴール前へ抜け出したラヒミを、ペナルティーエリアの外へ飛び出したウィリアムが倒してしまう。タンタシェフ主審は問答無用の一発退場を宣告。このときもVARが介入したが、レッドカードを提示した同主審の判定が支持された。
マリノスは攻撃をけん引するブラジル人トリオの一人、FWエウベル(31)に代えて、J1出場歴が3試合のGK白坂楓馬(27)を投入する。しかし、後半22分に再びラヒミにゴールを決められると、10分が表示されたアディショナルタイムには途中出場のFWコジョ・ラバが連続ゴール。第2戦で1−5の、合計で3−6のスコアとともに惨敗した。

 ゴール裏のスタンドには、マリノスのファン・サポーター約2000人がはるばる駆けつけていた。試合中にはチャントを含めて、大声をUAEの夜空へ響かせていたファン・サポーターへ向けて、キューウェル監督は再び声を絞り出している。
「遠くまで多くのサポーターが来てくれて本当にうれしかった。そして、このような残念な結果にはしたくなかった。それがすべてだと思っている」
しかし、試合は前半開始直後からアル・アインに主導権を握られ続けた完敗だった。
現役時代はアルゼンチン代表の点取り屋として活躍した、エルナン・クレスポ監督(48)に率いられるアル・アインは、システムを第1戦の[4−2−3−1]から[4−1−2−3]に変えてきただけでなく、ハイプレスでマリノスの攻撃を寸断した。
さらに最終ラインの背後を狙うパスを駆使した攻撃を多用し、先制点もカウンターから奪っていた。マリノスに生じた焦りはVARを介して宣告されたPKや、守護神ポープの一発退場でさらに膨らんでいき、最終的には自滅してしまった。
指揮官に続いてフラッシュインタビューに応じた右サイドバックの松原健(31)も、自戒の念を込めながら「アジアの壁、というのを知りました」と振り返っている。
「僕たちは最善の準備をしてきたつもりですけど、そのなかでこうして結果が出ない、ということはやはり何かが足りない。本当にそれに尽きると思います。一人ひとりのメンタリティーをもっともっと強く持たなきゃいけないし、10人になったとしてもチームがバラバラにならずに、もっともっとまとまる必要があった」
アカデミーからのマリノスの生え抜きで、ACL制覇にかけてきたチームの歴史を知るキャプテンのMF喜田拓也(29)も、必死に前を向いた。
「簡単ではないことだけど、それでも僕たちはやらなきゃいけない。この悔しさをかみしめて、しっかりと胸に刻んで糧にして、前を向いていきたいと思う」
一夜明けた今日26日に帰国するマリノスは、ACLを勝ち進んできた関係で未消化になっているJ1リーグのカードが、ミッドウィークに組まれていく過密日程とも戦っていく。衝撃的な敗戦から中3日の29日には、ホームで柏レイソル戦が待っている。