プロボクシングのスーパーバンタム級王者の井上尚弥(31、大橋)が6日に東京ドームで6回TKO勝利した元2階級制覇王者のルイス・ネリ(29、メキシコ)と昨年7月にTKO勝利した元WBC&WBO世界同級王者のスティーブン・フルトン(29、米国)の2人が来年にもフェザー級で対戦する可能性が出てきた。ボクシング取材歴30年のジャーナリストのリカルド・セリス氏ら複数のメディアが報じたもので、ネリは自身のXで「近日中に発表」「すぐに(やりたい)」などと投稿してカード実現を煽っている。井上は、将来的にフェザー級への転級を視野に入れており、敗者復活戦を勝ち抜いてきた男が、フェザー級でモンスターとのリベンジのリングに立つ可能性さえ出てきた。

 カネロvsクロフォードがメインの「メキシコvs米国」5対5マッチ

 言うならば井上尚弥に敗れた男たちの敗者復活戦だ。
東京ドームで1ラウンドにダウンを奪うものの3度ダウンを奪い返された、6回にキャンバスに沈んだ“悪童”ネリと、試合前にバンテージなどへのクレームを散々つけたあげくに8回TKO負けを喫したフルトンの2人がフェザー級の舞台で対戦する可能性が報じられた。
数々のビッグマッチをプロモートしているサウジアラビアの娯楽庁長官であるトゥルキ・アルシェイク氏が計画しているとされるもので、スーパーミドル級の4団体統一王者のサウル“カネロ”アルバレス(メキシコ)対スーパーライト級とウエルター級の2階級4団体統一王者のテレンス・クロフォード(米国)のビッグマッチをメインとした「メキシコvs米国」の5対5マッチの実現をぶちあげ、そのひとつのカードにネリvsフルトンを候補として挙げたものだ。
現段階では何も具体的には進んでいないが、気の早いネリは、さっそくXで反応。フルトン戦の計画があることを伝えているXへの投稿に対して「近日中に発表」「すぐに(やりたい)」などとリポストした。
試合前に「オレはフルトンのように恐怖を感じて逃げるようなことはしない」などと豪語しながら、井上に敗れたネリにしてみれば、そのショックから立ち直るには、元WBC&WBO世界スーパーバンタム級王者は最高の相手だろう。
また「今年はオレにとって勝負の年。3度目の世界ベルトを手に入れる」という目標を掲げているフルトンにしても、繰り返しディスられたネリとは因縁もあり理想の相手。現在WBAのフェザー級1位にランキングされているフルトンは6月15日に同級7位のルイス・ヌニェス(ドミニカ共和国)と再起戦を戦うことが決まっている。
そして2人が狙うのは井上とのフェザー級での再戦だ。ネリvsフルトンは、その挑戦パスポートを奪うための一戦となる可能性もある。
元5階級制覇王者のノニト・ドネア(フィリピン)は2019年11月に井上にダウンを奪われるなどして判定で敗れたが、再びWBC世界バンタム級王座を手に入れてモンスターとの再戦の資格をゲット。2022年に再戦舞台に立つことに成功している。結果は無残な2回TKO負けだったが、ス―パ―バンタム級で戦う相手がいなくなった井上は、フェザー級に転級するものと見られ、そこでネリとフルトンが王座に君臨していれば、否応なしに再戦することになるだろう。

 ただ現時点では、あくまでも計画段階。カネロvsクロフォードありきのビッグイベントだけに、この先どう展開するかの見通しは立っていない。まずクロフォードは8月3日にサウジアラビアが主催者となって米国ロサンゼルスで開催するイベントでWBA世界ス―パーウェルター級王者のイスライル・マドリモフ(ウズベキスタン)に挑戦する。カネロとクロフォードの間には、階級の壁があり、クロフォードがここで4階級制覇を達成することが最低条件となるだろう。
カネロvsクロフォード、ネリvsフルトン以外の残りの3カードの候補も豪華だ。5月5日にカネロと対戦して判定負けしたハイメ・ムンギア(メキシコ)vs元IBF世界スーパーミドル級王者のカレブ・プラント(米国)、WBA世界スーパーライト級王者のイサック・クルス(メキシコ)vsWBC世界ライト級王者のシャクール・スティーブンソン(米国)、井上との対戦を熱望しているIBF世界フェザー級王者のルイス・アルベルト・ロペス(メキシコ)vsWBC世界同級暫定王者のブランドン・フィゲロア(米国)の3試合がリストアップされている。いずれも単独で興行が成立する好カード。ロペスvsフィゲロアの勝者もまた井上の有力な対戦候補となってくる。ビッグプランの行方に注目したい。