著名人になると、方々から贈り物が届くらしい。落語家の立川談志さんは「縁あってわが家に届いたものは、きちんと食べきってやらないとかわいそうだ」と、送られてきた食べ物の山と格闘する毎日だった◆ついに音を上げ、贈り主一人ひとりに手紙を書いた。〈今年はお歳暮はいりません、ほしいものがあったらこちらから電話するから〉。弟子の立川志の輔さんが明かしている◆物価高騰が続くこのごろ、亡き談志師匠になり代わって「ほしいもの」を指折り数えてみる。お高いキャベツにブロッコリー。コメまで値上がりの気配を見せている。いずれも天候不順や病害虫で収穫が思うにまかせず、加えてコメは訪日客の消費が増えたあおりで品薄になっているのだとか◆原因は自分たちの力の及ばないところにある。やろうと思ってやっている「値上げ」じゃありません。どうしようもない「値上がり」なんです…。消費者の批判の矢面に立たされる企業や店舗にしてみれば、そう言いたい心境だろう◆とても「ほしいものがあったら」などと、おねだりできるご時世ではない。もっとも、談志師匠にならって手紙を書こうにも、秋から110円に上がるというし。ろくに便りも出せやしない、とぼやきが出る。師匠ならどう言うだろう。色紙によく書いたという「黙って食え」だったりして。(桑)