文化庁は3月、食文化に関する情報発信に取り組む博物館や道の駅などの「食文化ミュージアム」として新たに21件を選定した。その中から、群馬県館林市の「製粉ミュージアム」と、静岡市の「清水すしミュージアム」を紹介する。

硬い小麦を粉砕し、ふるいにかけて粉にする製粉。コメと並ぶ人類最大の食文化をテーマにした国内唯一の施設が、群馬県館林市の製粉ミュージアムだ。1900(明治33)年創業の日清製粉が平成24年、従来の記念館を大幅に改修・増設してオープンした。東武伊勢崎線館林駅西口に、創業期の工場事務棟を保存活用した本館とモダンな新館、美しい日本庭園で構成されている。

1万年の製粉の歴史紹介

うどん、まんじゅうなど、古くから小麦生産が盛んな群馬の一角に近代装備の製粉会社を立ち上げたのが、上皇后美智子さまの祖父、正田貞一郎氏(1870〜1961)。以来、激動の日本近代史とともに歩んだ同社の歴史が本館に詰まっている。

日本庭園を見渡すエントランスを通って新館へ入ると、製粉とは何かについて、1万年にわたる歴史や近代の製法をモニターなどで紹介。中央には小麦を粉砕する新旧のロール機、粉砕された胚乳や表皮をふるいにかける新旧シフターが置かれている。

パンやラーメン、ケーキにスパゲティと用途によって使う小麦粉が異なることなども紹介。パノラマシアターなどで小麦の輸入から製造までの流れも解説、本腰を入れると1時間では通過できない。

ミュージアム全体は開館翌年にグッドデザイン賞を、平成26年度には本館がBELCA賞(ベストリフォーム部門)を受賞した。

「社会とともに歩んだ歴史と伝統、そして製粉事業を通じ、ものづくりのスピリットを次世代に伝えたい」という日清製粉の思いは、力強いメッセージとなって醸し出されている。

入館料は大人200円、小中生100円。開館時間は午前10時〜午後4時半。休館日は不定期なのでホームページで確認を。

明治期の清水を再現

「清水すしミュージアム」は、平成11年に清水港開港100周年を記念して作られた複合商業施設「エスパルスドリームプラザ」(静岡市清水区)の2階にある。

清水港は冷凍マグロの水揚げ量が日本一で、日本一深い湾である駿河湾に面していることもあり海産物が豊富だ。当時の清水市(現・静岡市清水区)はすし文化が色濃く、人口に対するすし店の数が他の地区よりも多かったことが、施設の創設につながった。

ミュージアム内は、国内外の魚食文化や日本におけるすしの歴史、文化が学べるコーナー「鮨学堂」のほか、清水港が開港した明治時代の清水の町並みを再現した回廊などで構成する。

保存食として発展してきた押しずしが、江戸時代の中期に握りずしへと進化する過程や当時の屋台の様子などを展示物などで再現。すしに欠かせないしょうゆや酢などについての資料や写真も展示されている。

同施設を運営するドリームプラザ(静岡市清水区)によると、「ドリームプラザ全体では中国などアジアからの来場者が多いが、すしミュージアムは欧米からの来場者に人気がある」(広報担当者)という。

ミュージアムの出口から1階に降りると、周囲には地元のすし店5店が出店する「清水すし横丁」というコーナーが広がる。魚に関する情報や多様な魚料理、世界の魚食文化や日本のすしの歴史を学んだあとは、清水が誇るすしが楽しめるという〝すしの総合施設〟となっている。

清水港に面した「エスパルスドリームプラザ」は、飲食店やおみやげ店などの物販施設、地元出身の漫画家、さくらももこさんの代表作にちなんだ「ちびまる子ちゃんランド」、映画館、観覧車なども有している。すしに限らず、港町清水がまるごと楽しめるよう工夫されている。

入館料は大人500円、4歳から小学生までは200円。開館時間は午前11〜午後6時。年中無休。

(風間正人、青山博美)