2022年9月、静岡県牧之原市の認定こども園で当時3歳の河本千奈ちゃんが通園バスに置き去りにされ、重度の熱中症で亡くなった事件。業務上過失致死の罪に問われている元理事長(74)と元クラス担任(48)の2回目の裁判が静岡地裁で開かれました。5月15日は、元クラス担任への質問が行われ、初公判に続き法廷に立った千奈ちゃんの父親からの問いに「私の責任だと思っています」と答えました。

<滝澤悠希アナウンサー>
「午前9時23分です。いま、被告が静岡地裁に入っていきました」

2回目を迎えた裁判。今回は事件当時、クラス担任だった被告の発言に注目が集まりました。

2022年9月、牧之原市の認定こども園「川崎幼稚園」に通っていた河本千奈ちゃん(当時3歳)が通園バスの中に約5時間、置き去りにされ重度の熱中症で亡くなりました。

当時バスを運転していた元理事長は、園児をバスから降ろす際、座席の確認を怠って千奈ちゃんを車内に置き去りにしたなどとして、また、元クラス担任の女は、千奈ちゃんが登園していないと気づいたにもかかわらず「欠席」と信じ込み確認しなかったとして、ともに業務上過失致死の罪で在宅起訴されました。

4月23日に開かれた初公判では、元理事長と元クラス担任は起訴内容を認め、その後、元理事長への被告人質問が行われました。被害者参加制度を使って法廷に立った千奈ちゃんの父親も質問を行ない「千奈がバスの中で、自分ではどうすることもできなく1人で亡くなっていった気持ちがわかりますか」と質問を投げかけ、元理事長は「はい、苦しい思いをしていたんだなと思います」と答えました。

5月15日午前10時から開かれた2回目の裁判では、元クラス担任の女への被告人質問が行われました。

<滝澤悠希アナウンサー>
「被告は、パーティション越しの遺族に一礼したあと、証言台に立ちました。そして、一つ一つの質問にか細い声で淡々と答えていました」

初公判に続いて、被害者参加制度を使って法廷に立った千奈ちゃんの父親に一礼をした被告。まず、弁護側からの質問に答えました。

<弁護側>
「どういう気持ちで、日々過ごしていますか」
<被告>
「私の責任で取り返しのつかないことをしてしまいました。死にたい気持ちと、死んではいけない気持ちの繰り返しで、ちゃんと向き合っていかなければいけない気持ちで過ごしています」

続いて、千奈ちゃんの父親が質問を投げかけました。

<父親>
「千奈がバスの中で1人でどうすることもできなく、亡くなった気持ちが分かりますか」
<被告>
「はい」
<父親>
「そのとき千奈は、どのような気持ちだったかわかりますか」
<被告>
「なんでバスの中に自分だけいるの、先生が来てくれないの、降ろしてくれないの、と思っていたと思います。ご両親のことを思い浮かべて、助けを求めていたと思います」
<父親>
「正直に答えてください。バスから降ろし忘れていた乗務員と園長が1番の原因だと思っていませんか」
<被告>
「前の年にあった(福岡・5歳男児置き去り死)事件もあったにも関わらず、私が連絡しなかったことで起きたと思っています」

いままで、無断欠席をしたことがなかったという千奈ちゃん。その千奈ちゃんがいないことに被告は気づいていたにも関わらず、欠席だと思い込んでいたと話しました。

<父親>
「あなたしか置き去りにされた千奈を助けられる人はいませんでした。あなたの責任は重いと思っていますが、どうですか」
<被告>
「私の責任であると思っているので、重いと思っています」

また15日は、元理事長への追加の被告人質問も行われ、元理事長は「2022年5月にバスを運転した際には、車内を見て回り園児の忘れ物を職員室に届けた」と答えたものの、事件の際に確認しなかった理由について「親戚との会合があり時間を気にしてしまった」などと説明しました。

幼い女の子の命を守ることができなかった責任はどこにあったのか。次回の裁判は、6月13日に開かれ、千奈ちゃんの両親が意見陳述をし結審する予定です。