ジョアン・フェリックスのバルセロナへの加入を理解する上で、ジョルジュ・メンデスの名前を切り離すことはできない。ジョアン・ラポルタ会長とこのポルトガル人の代理人は、以前ほど共通の利害を持たなくなったとはいえ、サッカービジネスを介して繋がりを保っている。

 実際、アンス・ファティをレンタルの形でブライトンに送り込み、フェリックスとジョアン・カンセロを獲得した昨夏の慌ただしかった移籍市場の最後の数日間を経て、バルサのコーチングスタッフは「メンデスに助けてもらうことができる我々はラッキーだ」と口にした。

 しかし、シャビたちがより喜んだのは、カンセロの獲得だった。フェリックスの獲得はカンセロほど優先事項ではなかった。

 そんな中でも、フェリックスの才能は、練習初日からコーチングスタッフを驚かせた。「スペクタクルだ。ボールコントロール、ドリブル、すべてのプレーにクオリティが溢れている」と称賛の声がやまなかった。
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 ディエゴ・シメオネの下で何年も影に隠れていたその才能が、シャビとの出会いをきっかけに輝き始めたかに見えた。「アトレティコのサッカーのクオリティが悪いとは言いたくない。でも僕にはバルサのサッカーのほうが合っている」とフェリックス自身も語っていたものだ。

 その言葉を証明するように、序盤は幸先の良いスタートを切った。ラ・リーガでの最初の15試合で、フェリックスは13試合に先発で出場。その中には、決勝点を挙げた古巣アトレティコ戦(バルサが1−0で勝利)も含まれていた。

 しかし、徐々にコーチングスタッフもフロントも、特定の局面で見せる淡白さを問題視し始めた。シメオネとの間で起こっていたことと似たようなことがバルサでも起きていた。

「チーム全体としてのバランスという点で問題がある。プレスをかけない選手が2人もいるなんてありえない」と、レバンドフスキに加えて、スポーツ部門のスタッフは苦言を呈した選手がフェリックスだった。

 象徴的な試合が、「多くのことを懸けて戦っている。声を荒げる必要があると感じた」とシャビが怒りを爆発させたアルメリア戦(ラ・リーガ第18節、バルサが3−2で勝利)だった。フェリックスは前半終了とともに交代を命じられ、そしてその日を境に、先発で起用される機会が激減した。
 
 バルサの情報筋によると、クラブは「世界最高のサイドバックの1人」に位置付けるカンセロのレンタル延長に取り組む一方で、フェリックスの残留については消極的だという。「例外を除けば、ジョアンは重要な試合で爪痕を残していない」とコーチングスタッフは指摘する。

 その例外の1つが古巣のアトレティコ戦で、前述の第1ラウンドに続いて、後半戦の第2ラウンドでも先制ゴールを決める活躍(バルサが3−0で勝利)を見せた。
 
 ブライトンにレンタル移籍中のアンス・ファティが復帰を熱望しているため、このままではジョルジュ・メンデスは再びフェリックスの新天地を見つけなければならない。

「バルサでのプレーに集中している。その先のことは考えていない。今後の活躍次第で状況が変わる可能性もある」とのコメントが示唆するように、その選択肢からアトレティコが外れていることは本人も自覚している。

 才能が折り紙付きでも、フェリックスの自分自身を欲しがるクラブ探しは続いている。

文●ファン・I・イリゴジェン(エル・パイス紙バルセロナ番)
翻訳●下村正幸

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