◇大学アメフト交流戦 近大10−56立命大(2024年5月26日 MKタクシーフィールドエキスポ)

 訴えかけるような口調で、近大・古橋由一郎ヘッドコーチ(HC)は選手に呼びかけた。立命大に10ー56と敗れた試合後のハドル。「3強に勝つためには、全員が関西を代表するような選手にならなあかんねん!」。オープン戦の位置づけが強い春の「熱」ではない。名将は、本気でチームの意識改革を目指していた。

 甲子園ボウル3連覇など、監督として一時代を築いた立命大を離れ、たどり着いた「新天地」。関学大、関大と「リーグ3強」を形成する古巣は、現在地を知るのに望むところの相手だった。ディフェンスコーディネーターも兼務する古橋HCの眼前で、許した8TD。原因は明確だった。

 「(近大)選手の重心が後ろにかかっていて、一発一発のプレーでやられている。テクニックより、気持ちの問題。(試合内容は)ボロボロでした」

 関西学生1部リーグの上位から久しく遠ざかるチームでは、試合に臨む準備、心構えから指導しなければならない。「当たり前のことを当たり前にできるようにならないと、強くはなりません」

 還暦を前に、近大グラウンド近くのマンションで独り暮らしをスタート。野菜炒めだけだった自炊のレパートリーに、卵焼きのあんかけが加わり、チームカラーの青いシャツは衣料量販店で買い揃えた。「しまむらさまさまですわ。ハンバーグは…失敗しました」。グラウンドを離れても挑戦。努力が報われる秋は、必ず訪れる。