仙台市内に重度の知的障害がありながら、色鮮やかな絵を描き続けている18歳の男性がいます。周囲の支えも受け、見る人の心を魅了する絵を描く男性について取材しました。

正広さん、個展を開く

カタツムリをテーマに描いた作品。木漏れ日に照らされる様子が、色彩豊かに表現されています。

TBC

作品を描いたのは、この春、特別支援学校高等部を卒業した鈴木正広さん18歳です。

4月、正広さんが小学校時代から描き続けてきた絵画の展示会が、仙台で開かれました。ギャラリーに並んだ12作品は水彩絵の具やクレヨンなど様々な画材を使って仕上げていて、いずれも障害者の美術展などで入賞しています。

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展示会を訪れた画家:
「台原森林公園がお気に入りのようなんですけど、自分が同じ公園を歩いても絶対に気づけない色とか世界とかを表現できて、圧倒されて感動しました」

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保育園時代の園長:
「すごく素晴らしいと思います。希望ですかね、生きるって素晴らしいということが見える気がします。とてもうれしいです」

きっかけは水性ペンとの出会い

1歳半の時、知的障害があることがわかった正広さん。絵を本格的に描き始めたのは、小学校4年生の夏休みからでした。

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正広さんの母・鈴木京子さん(64):
「ポスカという水性ペンと出会い、すごく発色がいいペンで夢中になって試し書きなど描き続けた。描いた絵を担任の先生が目にとめてくださって、美術部の先生に出品してくださいとお願いした結果、賞をもらえた」

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9年前、正広さんが七夕や信号機などをモチーフに描いた作品です。それまでは「青」を使った絵がほとんどでしたが、カラフルな色遣いが特別支援学校の担任の目にとまり、子どもの絵の美術展、「全国教育美術展」に出品したところ、特選を受賞したのです。これが正広さんにとって転機となりました。

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母・鈴木京子さん:
「学校の先生や友達やスクールバスの運転手さんまで、みんな正広君のことを褒めてくださって。家に帰ったら絵を描くと言っていた。ほめ続けてくださった皆さんにありがたい気持ちでいっぱいです」

才能開花は地域とのつながり

この日、正広さんと京子さんはある場所へ向かいました。桂島新一さんの自宅です。

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出会いは正広さんが小学校2年生のとき。特別支援学校のスクールバスを待っていた正広さんに、通学路の見守りボランティアをしていた新一さんが声をかけたのが始まりでした。

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母・鈴木京子さん:
「距離を置かないで、むしろおじいちゃんおばあちゃんのほうから積極的に関わっていただけていたので本当に。しかもスクールバス(乗り場で)毎日で、身内よりもよっぽど毎日会っていたので。血はつながっていませんが、正広君にとっても大好きで大切な存在だったと思うし、親にとっても本当にありがたい存在ですね」

教員も務め多くの子どもたちの成長をそばで見守ってきた桂島さん。地域の温かい繋がりが正広さんの中に育まれた芽を伸ばしました。

友達や先生の笑顔が溢れる1枚「みんなでおはなみ(2019)」。桜をモチーフにした作品は、5年前に桂島さんの自宅の庭で描いた1枚です。

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正広さんは、大好きなお母さんとやり取りをしながら楽しかった思い出をキャンバスに描いていきます。1つの作品を仕上げるのにはおよそ2週間かかります。

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母・鈴木京子さん:
「お店に並んでいるショーウィンドウの色々なものがこの人にとっては全部キラキラに見えるみたいなんですね。全部キラキラで素敵な空間にこの人には見えていると思います」

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桂島新一さん:
「全部障害でなくて、何かいいところがあるんだね。進み方は遅いけども着実に、人間は必ず良くなっていくというかね。楽しみは未来にあるという感じだね」

うれしい楽しいつながりを

正広さんは、この春から日常生活を送る上で自立支援を受けられる生活介護施設で週4日ほど過ごしています。

視界に入るものが気になってしまうため、食事は窓側を向いてとります。創作活動の時間になると一転アイロンビーズを並べる作業に没頭しました。

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母・鈴木京子さん:
「ちょっとまだ慣れる入り口のようなところで。この人なりに頑張っているところなんですね。やっぱり絵というのは、楽しいとかうれしいとかのモチベーションがあってできるものだと思うので、うれしい楽しいつながりが早くできたらいいなというのがありますね」

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正広さんに自信を与えた「絵」。一緒に喜び支えてくれる身近な「ひと」。自分を表現するため正広さんはこれからも描き続けます。