現地時間5月24日(日本時間25日、日付は以下同)、ドイツのベルリンでユーロリーグのファイナル4が開幕。初日はセミファイナル2試合が行なわれた。

 今年の話題はなんといっても、2012年以来12年ぶりにパナシナイコスがファイナル4に復帰し、オリンピアコスと並んでギリシャ2強の揃い踏みとなったこと。チケットはファイナル4の顔ぶれが決定する前の昨年12月に発売されたのだが、先行発売分はなんと販売開始後1時間でソールドアウト。一般発売分も4時間で売り切れるという人気ぶりだった。

 いざ開場してみると、観客席の半分近くが“赤”のオリンピアコスと“緑”のパナシナイコスのギリシャ人サポーターによって埋まり、トルコ系住民が多いドイツのお国柄も影響してかフェネルバフチェの黄色軍団も大挙押し寄せ、その合間にレアルのエル・ブランコ勢という様相に。
  アリーナ周辺には開場前から各応援団による雄叫びのようなチャントが鳴り響き、チケットを持たないフェネルバフチェ・ファンの大群が非常口を強行突破。会場に雪崩れ込む暴挙もあって試合開始が30分近く遅れるというハプニングもあったが、無事に試合がスタートしてからは、各チームの応援団による壮観な応援合戦が繰り広げられる熱気あふれる雰囲気となった。

 試合は、パナシナイコスとフェネルバフチェが対戦した第1戦は73−57でパナシナイコスが勝利。レアル・マドリーとオリンピアコスが対戦した第2戦は、87−76でディフェンディングチャンピオンのレアルが3年連続となる決勝進出を決めた。

 コート上で激しい戦いが繰り広げられるなか、視線はコートサイドにも注がれた。なかでも一際存在感を放っていたのが、ヤニス・アテトクンボ(ミルウォーキー・バックス)、その隣にシックなシルバーのジャケットに身を包んだスコッティ・ピッペン(元シカゴ・ブルズほか)、そしてホスト国ドイツの英雄で昨年のワールドカップMVP デニス・シュルーダー(ブルックリン・ネッツ)の元&現役NBA選手が陣取った一角だ。
  ピッペンはスポンサーや大会主催者絡みの任務といった理由ではなく、個人的な興味で足を運んだとユーロリーグのプレゲームショーの中でコメントした。

「オーストラリアのナショナルバスケットボールリーグ(NBL)の友人たちと一緒に来たんだ。目的は才能のある選手をチェックすること。彼らにヨーロッパのバスケットボールがいかに素晴らしいかを聞いて、ファイナル4でそれをチェックしようと思ってきたんだ」

 出場する4チームや選手たちについてはほとんど知識はなかったというが、それだけに「コート上で彼らがどんなプレーをするのか見るのが楽しみだ」と期待のコメント。実際に試合中は、時折身を乗り出しながら熱心に観戦する姿が見られた。

 一方、ギリシャを代表するスーパースターのヤニスにとっては、来訪の最大の目的はパナシナイコスに所属する弟コスタスの応援。コスタスは約7分のプレータイムで2リバウンド、1ブロックと守備面で奮闘したが、交代してコートを去る際には立ち上がって弟にオベーションを送るという、仲が良いことで知られる彼らのブラザーシップを象徴するようなシーンもあった。
  試合後、ヤニスはマイクを持って取材エリアに登場。いつもはマイクを向けられる側のヤニスが、弟に対して試合後のフラッシュインタビューに挑戦した。

ヤニス:いま、ベルリンのファイナル4会場に来ています。ここで世界トップクラスのリーグであるユーロリーグのファイナル4が行なわれていますが、最初に聞きたいことは、緊張しましたか?僕は弟がプレーしている様子を見てとても緊張したんですが、試合の前はどのような気持ちでしたか?

コスタス:とにかくものすごく興奮していました。少し緊張もしたけれど、いざ試合が始まると、そうした気持ちはすべて吹き飛んで、完全に試合モードになって自分の力を出し切りました。

ヤニス:グッジョブ!それに良い答えだ。続いて、今日の勝因は?

コスタス:ディフェンスです。フェネルバフチェは攻撃的なチームで、平均95点くらい取っていたチーム。その彼らを今日は57点に抑えることができたので、ディフェンスがうまくいったことが今日の勝因だと思います。
 ヤニス:パナシナイコスはもう長い間ファイナル4から遠ざかっていて、今回は久々に……12年?12年ぶりにファイナル4に復帰しただけでなく、ファイナルにも進出するわけですが、そのことについての感想は?

コスタス:ものすごく興奮しています。ファイナル4に復帰できるだけの進化を遂げて、このような機会を得られたことにとても充実感を覚えています。次の試合に臨む準備は万端です!
 ヤニス:最後にもうひとつ。すでにやりきった?

コスタス:とんでもない。これからです!

 質問に答えるコスタスを、ヤニスが終始優しい眼差しで見つめるという、微笑ましいやりとりを披露したアテトクンボ兄弟。この週末は、ファンゾーンでのイベント出演など大忙しのコスタスだが、頼もしい兄が傍にいてくれることは、なによりのエネルギー源になることだろう。

文●小川由紀子

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