吹奏楽に青春を捧げ、全国大会での金賞を目指す高校生たちの姿を描いた「響け!ユーフォニアム」(毎週日曜昼5:00-5:25ほか、NHK Eテレ/NHKプラス・Lemino・ABEMA・ディズニープラス・FODほかで配信)、シリーズの「最終楽章」となるTVシリーズ第3期。新部長に就任した黄前久美子(CV:黒沢ともよ)は3年生に進級し、部員たちとともに高校最後の大会へと臨んでいく。第5話は、高校最後の「あがた祭」の夜に、久美子と麗奈が特別な絆を再確認する「ふたりでトワイライト」。(以下、ネタバレを含みます)

■進路に悩む久美子に父がかけた意外な一言

サンライズフェスティバルを終えて一息ついたこともあり、久美子たち3年生は卒業後の進路について真剣に考える時期にきていた。高坂麗奈(CV:安済知佳)からは相変わらず音大への進学を勧められるも、音楽を仕事にするイメージどころか、そもそも自分が働いているイメージすら湧かない久美子であった。また一方で、コンクールへ向けた準備も着々と進んでいく。久美子と麗奈、塚本秀一(CV:石谷春貴)の幹部3人は、強豪校に倣い、大会ごとにオーディションを実施して演奏メンバーを決定していく方針を決める。

冒頭、久美子が進路について父の黄前健太郎(CV:中博史)と話すシーンがあるが、健太郎は過去に、久美子の姉・黄前麻美子(CV:沼倉愛美)と進路について揉めたことがあるだけに、いったい久美子にどんな言葉をかけるのかが注目だった。結果、健太郎は「やりたいことがあるなら言いなさい。無理強いはしないから」と、久美子の意思を尊重する姿勢を見せるなど、麻美子との一件を通じて考え方が変化していることが窺える。これには久美子も少しハッとしており、もしかすると彼女にとっても意外な一言だったのかもしれない。SNSでも「お父さん丸くなったなぁ」「これは良い父親!!」などの声が寄せられていた。

■久美子と真由のあいだに生まれるズレ

パート練習中、黒江真由(CV:戸松遥)は、転校してきたばかりの自分がオーディションに参加するのはほかの部員に申し訳ないという理由で、オーディションを辞退できないかと悩む。しかし久美子は「北宇治は実力主義」という姿勢を貫き、真由にもオーディションへの参加を勧める。真由のあまりに遠慮がちな態度に違和感を覚える久美子は、その後真由から「あがた祭」に誘われるも、思わず「先約がある」と嘘をついてしまうのだった。

今シーズンのキーパーソンとなる真由が、ついに久美子に対しても少しづつ距離を縮め始めてきた。部内の雰囲気を尊重する真由の性格のことを思えば、オーディションを辞退したいという気持ちも理解はできるが、「実力主義」を掲げてここまで頑張ってきた久美子からすれば、複雑な気持ちだろう。とくに校舎裏で久美子と真由が話すシーンでは、久美子の表情は終始硬く、かなりガードを固めているようにも感じる。これにはSNSでも「完全に真由に怯えてるw」「真由って底知れぬ怖さを感じるよな」などの声があがっていた。久美子が誰かに対してこのような態度を取ることは珍しいだけに、両者のあいだには溝が生まれつつあるのかもしれない。今後のふたりの関係性に注目していきたい。

■麗奈と久美子、今シーズン初の協演

「あがた祭」当日、久美子は麗奈から誘われて麗奈の自宅を訪問する。食事を終えたふたりは、進路のことやコンクールの自由曲「一年の詩」への感想などを語り合う。すると麗奈が久美子に「吹こうか」と誘い、ふたりは麗奈の自宅内にあるスタジオへ移動する。こうして、「一年の詩」第3楽章にあるトランペットとユーフォニアムのソリを吹いたふたりは、改めて全国でこのソリをいっしょに吹くことを誓い合うのだった。

久美子と麗奈がソリを演奏するシーンでは、麗奈が息を吸い込むと同時に画面が暗転し、「あがた祭」を楽しむ部員たちの姿が次々と映し出されるという演出。トランペットとユーフォニアムの音色が溶け合うかのような美しい旋律とお祭りの雰囲気がぴったりとマッチしていて、とても印象深いシーンに仕上がっている。

お祭りも終わりに差し掛かったころ、外に出て散歩をする久美子と麗奈。久美子に対してまた家に誘ってもいいかと尋ねるなど、どこか不安がっているような麗奈は、どうやら卒業後の久美子との関係を心配している様子。再三にわたって久美子に音大への進学を勧めていたのも、音楽という繋がりが切れるとふたりの関係も終わってしまうのではないかと感じていたからだということが分かる。そんな麗奈の言葉を受けた久美子は、その可愛さに思わず笑ってしまう。そして久美子は改めて、「この関係は特別だから大丈夫」と、麗奈を安心させるのだった。

最後のシーンは麗奈の可愛らしさが際立っている。久美子を自宅に誘い、ともに演奏し、誓いを新たにするなど、今回の麗奈はとても積極的だったが、それもこれも将来への不安からきていたと思うと、その健気さには久美子でなくても思わず笑ってしまう。麗奈が久美子に対して抱いている想いは、思っているよりもずっと強く、特別なものなのだろう。このシーンは表情の作画もとくに素晴らしく、SNSでも「美しすぎて言葉が出ない…」「やっぱりこのふたりは別格だ」などの声が寄せられていた。

さて今週は、久美子と真由に生じたわずかなズレから始まり、久美子と麗奈が特別な絆を確認し合うなど、対照的な関係性が同時に盛り込まれた展開だった。またそのほかにも、月永求(CV:土屋神葉)の成長した姿や、久しぶりに久美子と二人きりになった塚本秀一のイケメンっぷり、お祭りを楽しむ部員たちのイキイキとした表情など、見どころ満載な一話だった。次回第6話は5月12日(日)放送予定。期待して待とう!

■文/岡本大介