ユニコーンが「突然変異」だ。ドジャースの大谷翔平投手(29)が5日(日本時間6日)のブレーブス戦(ドジャー・スタジアム)で9&10号を含む4打数4安打、3打点の大暴れ。本塁打数など打撃9部門でMLBトップに立ち、昨季の44発を上回る「年間45発ペース」となっている。元通訳による前代未聞の詐欺事件に見舞われながらも量産態勢に入ったわけだが、“大谷の季節”は本来ならば6月。思わぬ早咲き現象が発生しているが、データを見ればそれも納得だ――。

 衝撃の2発に本拠地のファンは総立ちとなった。まずは初回の第1打席。「2番・DH」でスタメン出場した大谷は相手先発左腕・フリードのカーブを捉え、バックスクリーンへ先制の9号2ラン。8回には中堅左へ飛距離464フィート(約141・4メートル)の特大ソロをかっ飛ばし、4年連続の2桁本塁打に到達した。5―1で4連勝を飾ったこの日のチームは5安打だったが、そのうち4安打が大谷が放ったもの。「1本目はちょっと詰まり気味。2本目は完璧でした」と振り返った本人の表情にも充実感がにじんだ。

 とにかく勢いが止まらない。ブレーブスをスイープした今カードは特に好調ぶりが顕著だ。今回の3連戦で大谷は3本塁打を含む8安打、6打点、2盗塁に5得点。これで本塁打(10本)、打率(3割6分4厘)、安打数(52安打)、二塁打(14本)、長打率(6割8分5厘)などマニアックな記録も含めて実に9部門でメジャートップに立った。

 こうした活躍ぶりに米メディアも大谷を絶賛した。「MLB公式サイト」は「彼は1901年以来、ドジャース入団から最初の35試合で25本の長打(二塁打14本、三塁打1本)を記録した初の選手となった。ドジャースの夢は今や現実となった」と伝え、「CBSスポーツ」は「彼は24時間で3本のホームランを打った」。さらに、「スポーツ・イラストレイテッド」では「オオタニは来年まで投げることはないが、攻撃面の成果だけでもすでにドジャースが投資する価値がある」と言及し、スペインメディアの「MARCA」に至っては「ショウヘイ・オオタニはすでにイッペイ・ミズハラを過去に置き去りにし、MVPの調子を見せている」と早くも3度目のMVP受賞をにおわせた。

 ただ、驚くべきはこの爆発ぶりが5月上旬に起きている点だ。多くのMLB関係者が口をそろえるのは「オオタニの季節は6月に訪れる」というもの。昨年6月の月間打率は実に3割9分4厘、15本塁打、29打点でぶっちぎり。2年前の2022年は2割9分8厘、6本塁打、17打点だったものの、年間を見渡せばいずれも上位の成績だった。キャリアハイの46発を記録した21年も、月間成績ではやはり6月が3割9厘、13本塁打、23打点で最多だ。

 一方、5月は過去3年間とも打率2割4〜5分台で本塁打も昨季の8発が最多となっている。それなのに今季は5月でも出場した4試合で5割2分9厘、3本塁打、6打点とブレーキがかかるどころか加速するばかりだ。

 なぜなのか。その理由は打撃が大幅に進化しているから。MLBのスタットキャストのデータではメジャートップの数字が並ぶ。近年注目されているのがバレル率。バレルとは長打が出やすい打球速度(初速98マイル=約157・7キロ)と打球角度(26〜30度)を組み合わせた打球のこと。大谷は今季17・2%で断トツ。昨年の11・2%から大幅アップしている。

 また、ハードヒット率60・9%もヤンキースのソトと並んでトップ。ハードヒットとは打球速度95マイル(約152・9キロ)以上の打球のこと。昨年の54・2%からこれもアップ。つまり、長打が出やすい角度で、速い打球を打っているのだ。

 6月について、以前には「シーズンの中で試合に一番慣れている月。いい集中力を毎試合保てている」と語っていた大谷。このままの勢いで“6月男”が本番を迎えれば、どんなことになってしまうのか…。投手を封印して野手だけに専念する今季、自己最多の46発超えどころか想像を絶する記録が生まれるかもしれない。