このしくみを業務規程化したうえで徹底したことによって提案部署の反発を緩和することができ、より新事業の現場にかかわる人の声が経営陣に聞こえるようになった。すると、当初は反発していた提案部署にとって、いいことが起きるようになった。

経営陣が新事業の重要仮説をよく理解するようになった結果、「だったら、こうしたらいいじゃないか」という具体的なフィードバックが得られるようになったのである。経営陣の指示によって、部門間の連携がスムーズになった案件も出るようになった。

経営陣と現場が納得できるカタチ

経営陣は、経験だけでなく、経営資源も持っている。一方で、提案部署は、日ごろからコスト削減を厳命されているので、早く・安く・安全に・確実な案を提案しがちだ。要するに、「今までの事業とあまり代わり映えのしない案」ばかり上がってくる。しかし、それでは意味がないのである。経営陣から「これは大きな可能性がありそうだから、もっと投資したらよいのに」といわれるような案件を見つけていかねばならないのだ。

このような、重要仮説を質問するしくみを業務規程化して徹底することによって、経営陣と提案部署の合意形成を促進し、B社は現在も新事業を積極的に推進している。

事業環境の変化に対応して追加投資を決断したA社、新事業への理解不足に対応して重要仮説を質問するしくみを構築したB社、この両社に共通しているのは、戦略目標達成に必要な重要仮説を明確にすることを、経営陣が関与して徹底していることだ。大きな損失を避け、中長期の戦略目標を達成するためには、仮説を実現するようにマネジメントすることが必要だからだ。

著者:小川 康