商品開発も、広報戦略も、購買ターゲットをどこに置くかを見定め、ニーズに合った形で提供するのが定石だ。とくに「いなば食品」や、ちゅ〜るの「いなばペットフード」はヒット商品を抱えて、消費者から支持されてきたからこそ、ひと度その視点のブレが目立ってしまうと、商品そのものへの印象も悪くなってしまう。実際にSNS上では、今回の対応をめぐって、「ちゅ〜る不買したいが、愛猫が許してくれるか」などと葛藤する声も相次いでいる。

「第三者の視点」を入れた対応が必要

企業倫理を問われる状況では、対応もまた、倫理的かどうかの基準で評価される。その点から言えば、今回のプレスリリースでは、まだ不十分だ。さらなる悪評につながらないためには、早い段階で誠実かつ、的外れでない対応が必要となるだろう。

そのうえで欠かせないのが、「第三者の視点」を入れることだ。非上場のオーナー企業が、時折ガバナンスの機能不全に陥る要因として、同族経営だからこそモノが言えない状況を招くことがある。今回の文春報道も、まさにそこへメスを入れている。

いなば食品の対応を、もう一点評価するとすれば、報道に対して否定する表現はなく、「洗濯機置き場」の扱いを説明している程度だった点だ。ただ単に、どこに問題があるのか気づいていないだけの可能性は高く、それはそれで問題なのだが、素直に受け入れる余地があるようにも見える。

客観的な立場から、問題を捉えることにより、的外れな対応をとるリスクは軽減できる。いなば食品の採用情報ページによると、同社の企業理念は「独創と挑戦」、商品開発コンセプトは「真似しない、真似されない」だという。

他者との違いを明確にして、オリジナリティーを磨くことは重要だが、いざというときに「世間と自分たちのギャップ」を冷静になって見つめられないのであれば考えものだ。さらなる発展を目指すためには、これを機会に「どう見られているのか」「どう見られたいのか」をしっかりと考え直すのがよいのかもしれない。

著者:城戸 譲