Aに逃げられた後、どうやってことを収めるか仲間たちと話しているときでした。ある人物が僕にこう詰め寄りました。

「だって、私は木本さんを信用してお金を出したんです。木本さんは、その信用を裏切った。木本さんがお金を返済するのはとうぜんです」

僕に反論する気力はありませんでした。

億単位の借金を抱えたこと以上の「喪失感」

まだ暗号通貨に手を出している時代、仲間の一人が、いわゆる「草コイン」と呼ばれる、海のものとも山のものともつかないような怪しい暗号通貨に手を出していました。別ルートから聞き込んだ情報を鵜吞みにして買ったようでした。僕は彼に本気で怒りました。

「そのコインはあかん、ビットコインに替えとき」とアドバイスをしました。「仲間の誰にも損をさせたくない」からです。いま思えば正義の味方ヅラをしていて恥ずかしいのですが、仲間たちからは感謝されました。そうやって、ワイワイガヤガヤ楽しみつつ投資の知識を共有しながら、みんなで「儲ける」ことを夢想していました。その過程で、僕自身の信用も高まっていったと感じていたのです。

一歩一歩、地道に蓄積していた「木本武宏の信用」が、失われてしまった。これはどんなことよりも、心にダメージを与えました。

億単位の借金を抱えたこと以上の「喪失感」です。

「人生で一番大切なものを失くしてしまった」

僕の頭の中をそのフレーズがグルングルンと回っていました。

著者:木本 武宏