【ソウル聯合ニュース】北朝鮮が先月末、南東部の景勝地、金剛山観光特区内の韓国政府資産である消防署の建物を撤去したことが分かった。韓国統一部の具炳杉(ク・ビョンサム)報道官が10日の定例会見で明らかにした。

 具氏は「金剛山地区内の韓国政府施設である消防署が北によって撤去された事実を確認した」として、一方的な撤去に対し強い遺憾を表明した。

 北朝鮮が撤去した施設は金剛山観光特区外郭の南北離散家族面会所のそばにある消防署で、敷地面積4900平方メートル、延べ面積890平方メートルの2階建ての建物。建築と設備購入には政府予算22億ウォン(約2億5000万円)が投じられた。

 2008年7月8日に完工したが、3日後に北朝鮮兵による韓国人観光客射殺事件が起きて金剛山観光が中止され、実際に建物が使われることはなかった。

 金剛山観光特区の施設のうち、韓国政府の資産は離散家族面会所と消防署の2棟だったが、今回消防署が撤去されたことで離散家族面会所のみが残った。  

 北朝鮮が離散家族面会所を残して消防署のみを撤去した背景は不明だ。離散家族面会所は18年に行われた南北離散家族の再会行事まで数回にわたり改修・補修工事が行われたが、消防署は16年前に建てられてから全く使われておらず、老朽化が進んでいると伝えられていた。

 韓国政府は、北朝鮮が韓国の財産権を侵害したことに対し損害賠償請求訴訟を含む法的対応を検討していると明らかにした。具氏は「北の一方的な撤去行為はいかなる名分によっても正当化できず、全ての責任は全面的に北の当局が負わなければならない」と述べた。

 これに先立ち、政府は昨年6月、北朝鮮が南北連絡事務所を爆破したことに対する損害賠償請求訴訟をソウル中央地裁に起こし、開城工業団地の無断稼働に対する法的対応の可能性も示唆した。

 北朝鮮は19年2月にベトナム・ハノイで開かれた米朝首脳会談が決裂した後、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党総書記)が同年10月に「見るだけで気分が悪くなる、みすぼらしい南(韓国)側の施設を残らず取り除け」と指示したことを受け、韓国企業の施設を相次いで撤去した。昨年には北朝鮮が所有する施設を撤去する動きもみられた。