人気声優・浪川大輔。少年時代に海外ドラマの吹き替えからキャリアをスタートし、芸歴は約40年にもなる。「E.T.」「ネバーエンディング・ストーリー」「グーニーズ」という日本でもヒットした映画に立て続けに出演した“天才子役声優”として知られる存在になったが、アニメの世界に本格的に飛び込んだのは大人になってから。今や業界で名を知らぬ者もいないほどだが、若い頃にはきつい言葉を浴びせられたこともあった。48歳になった今、考えるのは「声優のすごさはもっとオープンに見せていい」ということだ。

【映像】浪川大輔が語る声優業界への思い

 まだ小学生のころから日本でも有名になったハリウッド映画に、少年役として出演。次々と大作に出たこともあり、浪川の名は瞬時に広まった。学生時代には仕事が減り、業界からも距離を取る期間もあったが、2003年に俳協に移籍してからは、アニメの仕事が激増。今ではアニメ側から浪川の名前を知るファンの方が多いことだろう。

 2012年に独立して声優事務所を設立、2016年には声優養成所も立ち上げた。業界への恩返しの思いが強いという。声優としては人気でも、経営者としては苦労も多い。先輩から「なんか今日、疲れてない?」と見透かされた時、意地になって「全然疲れてないです」と答えたものの見透かされ「社長なんでしょ?自分が辞めると決めたら明日にも辞められる」と言われ、いろいろな重圧・責任を感じていたところ、スッと心が救われたこともある。

 経営者でありながら、もちろんまだ現役の役者。「会社は他人に任せることができる。役者は自分にしかできない仕事があるなら、もう少しやりたい」という。養成所で指導する生徒たちにも「声優はオーディション。『なんで自分じゃないの?』と考えた方がいい。気持ちがなくなったら辞めた方がいい」と伝えている。

 人気声優のまま“出る側”だけに専念もできたが、浪川には声優の地位を上げたいという思いがある。「人気の職種と言われますけど、キャラクターありき。昔、言われたのは『いいよな、声出すだけでお金もらえて』」と、きつい言葉をもらったことがある。声優がキャラクターに声を入れるまでに、積み重ねた努力はほとんど人の目に触れない。浪川は「これだけすごいのは、もっとオープンに見せていい」という。違和感なく、かつキャラクターに命を吹き込むようにすることを、後進を育てるという形で見せようとしている。

 浪川は、アニメを「スイッチ」だという。「応援してくれる人の手紙を読むと、この作品を見て人生が変わりましたと。どこまで影響を与えられたかわからないですけど、(アニメは)自分にとっても人生を変えてくれた。小さい時のワクワク感を、大人になっても忘れたくないし。子どもの心とか気持ちは無限大。その時を一瞬でも思い出させてくれるスイッチですね」。今後の浪川は、どんなスイッチを入れて、声優の素晴らしさを伝えるか。
(SHIBUYA ANIME BASEより)