ドジャース大谷翔平投手が、打者専念のシーズンで打ちまくっている。チーム44試合目で12本塁打は、昨年ア・リーグで本塁打王に輝いた44本とほぼ同じペース。ただ打率に関しては昨年マークした.304を大幅に超える.361だ。パワーヒッターのイメージが強い大谷が、両リーグトップの打率を残している事実は、特大アーチを放つ以上に驚きの事態だろう。この高打率を支えているのが、全球フルスイングではなく、状況やコースに応じた“軽打”。苦手コースを克服した大きな理由は、ここにあった。

【映像】大谷の高打率を支える“軽打”

 まず今年の大谷は、ボールをしっかりと見極め、また空振りが減っている。ボールゾーンのスイング率は昨年の29.7%から26.7%と見逃しが増えた。またスイングした際にバットに当てるコンタクト率は51.5%から65.1%にアップした。余計に振らず、振ったら当てる。シンプルに確率が上がっている。

 特に数値が上がっているのは外角の際どいコースへの球だ。シャドーゾーン(ストライクとボールの境界周辺のゾーン。ストライクとボールの割合は半々程度)、チェイス・ゾーン(ストライクからやや外れたゾーン。投手が打者を誘おうと投球する際どいゾーン)という2つのゾーンがあるが、今季の大谷はこのゾーンへの対応が上がった。外角のシャドー&チェイス・ゾーンは、昨季の打率が.272で打球速度は87.9マイル(約141.5キロ)だったが、今季の打率は.407、空振り率は20.0%にまで下がり、打球速度は85.9マイル(約138.2キロ)になった。

 ここからあぶり出されるのが、外角の際どい球に対して強引にフルスイングをせず、うまくバットを合わせて軽打している点。もともと非凡な打撃センスの持ち主だけに、合わせにいけば外野の頭は越さずとも、外野の前まで運ぶことはできる。それができるテクニックとパワーを備えたからこそ、豪打と軽打の二刀流が可能になった。今季、大谷と対戦する投手はパワーヒッターとアベレージヒッター、2つのステータスを持つ最強打者と戦うことになっている。
(データ協力:データスタジアム)