【福岡】北九州市門司区で見つかった「初代門司駅」関連遺構をめぐり、日本イコモス国内委員会副委員長の溝口孝司・九州大教授(考古学)らは8日、危機的状況にある文化財保護を目的に発出される「ヘリテージアラート」の準備を進めていることを明らかにした。

 遺構は複合公共施設建設予定地の試掘調査で見つかり、1891年開業の門司駅関連施設とみられている。日本イコモスなど複数の学術団体が「国史跡級」などとして現地保存を求めているが、市は追加調査後に遺構を壊して複合公共施設を着工する予定だ。

 こうした状況を受け、溝口教授らは同日に会見を開き、遺構の重要性を改めて説明。市への情報開示請求で明らかになった試掘調査の報告書などをもとに市の調査が不十分だったとし、「文化財保護法違反とまでは言えないが、(文化庁の出した)埋蔵文化財調査のガイドラインの趣旨に反する」などと訴え、適切な範囲での発掘調査実施や、今後の文化財保護行政のため専門家の適切な指導、助言を受けることなどを求めた。その上で、イコモス本部(パリ)の「ヘリテージアラート」発出に向けた準備を、日本イコモスとして進めていることを明らかにした。「ヘリテージアラート」はこれまで国内では明治神宮外苑などで発出されているという。

 市の担当者は取材に、「県ともやりとりしながら、問題がないよう進めている」と説明した。(城真弓)