中日・尾田剛樹

 一歩目も二歩目も意外な展開だった。育成3位ルーキーながら、開幕直前になって支配下登録から一軍入りを果たした。

 プロ初盗塁は4月2日の巨人戦(バンテリン)だった。7回裏に一走に代わって代走で出場。けん制に引っ掛かって、慌てて反転して二塁へ向かう。併殺に持ち込まれたが、二塁・吉川尚輝のタッチをかいくぐって二塁へ到達。プロ初盗塁が記録された。

 尾田の足は何か持っているのか。同24日の巨人戦(東京ドーム)でも宿敵相手に足で沸せた。というよりも、足が沸かせた。

 2対2の同点でで迎えた7回表。先頭で左翼線二塁打を放った木下拓哉に代わって代走出場。山本泰寛の犠打で一死三塁。ここで思わぬ展開が待っていた。

 捕手・岸田行倫のけん制が尾田の左足かかとに当たる。白球は二塁ベース左へ転々。尾田は起き上がって反転、決勝のホームを陥れた。

「彼の足はな何かしてくれるという期待がある」と語るのは立浪和義監督。俊足に加えて、運もあるのか。「ラッキーな形で点が入った。勝ったのが大きい。連敗していて、雰囲気というか流れが悪くなっていた」と振り返った。

 尾田も「少し運があるのかな」と語る。4球目に受けた捕手からのけん制。直前の3球目。第2リードの大きさに、背後の大西崇之外野守備走塁コーチから「出過ぎるな」と注意されていた。結果としてけん制をもらい、決勝の本塁を駆け抜けた。

 和歌山にある仏教系の高野山高出身。毎朝、読経して徳を積んだ過去がある。尾田の足。大阪観光大、BCL/栃木を経て入団したルーキーがリーグをかき回す立浪竜に運をもたらす。 

写真=BBM