2年連続開幕投手も……



復調を果たして阪神投手陣をけん引したい青柳

 5月24日の巨人戦(甲子園)で戸郷翔征にノーヒットノーランを喫したが、連敗しないのが王者の強さだ。翌25日の同戦は3対0で完封勝利した。ジェレミー・ビーズリーが6回3安打無失点の好投で今季2勝目を挙げた。貯金を今季最多タイの7に増やし、首位をキープしている阪神だが、投打の主力選手たちが本来の力を発揮しているとは言えない。

 打線の軸として期待された佐藤輝明は35試合出場で打率.209、3本塁打、17打点。三塁の守備でもミスが目立ち、5月15日にファーム降格が決まった。プロ3年間で29勝と先発ローテーションで稼働してきた伊藤将司も今季は6試合登板で2勝1敗、防御率4.26と安定感を欠いている。5月11日のDeNA戦(横浜)では5回途中7失点の乱調で、チームも7点のリードを守れず大逆転負け。ファームで出直すこととなった。

 そして、2年連続最多勝の実績を持つ青柳晃洋も復調が待たれる。今季は2年連続開幕投手を務めたが、7試合登板で1勝3敗、防御率3.76。首脳陣の求める理想が高いだけに、現状は納得できないだろう。5月17日のヤクルト戦(神宮)で村上に3ランを被弾するなど6回5安打4失点で降板。2試合連続5四死球とボール先行の投球でリズムをつくれない。ファームで再調整となった。

22年には投手3冠に輝く


 佐藤、伊藤将、青柳はリーグ連覇に不可欠な存在だ。特に投手陣のリーダー格として青柳は替えが利かない。2021年に最多勝、最高勝率のタイトルを獲得すると、翌22年も13勝4敗、防御率2.05で2年連続最多勝、最高勝率、自身初の最優秀防御率に輝いた。

 相手のマークが厳しくなる中で、タイトルを総ナメにしたパフォーマンスは大きな価値がある。青柳は週刊ベースボールのインタビューで以下のように語っていた。

「去年(21年)よりは技術の部分でレベルアップできた点が多かったです。春季キャンプのときから取り組んできた高めのボールの精度だったり、左打者への内角の真っすぐだったりカットボールだったりを、練習したことが試合の中でそのまま出すことができたんです。また去年とは違う追い込み方だったり、抑え方ができたと思います。つまりバリエーションが増えたと思います」

「去年までは外のツーシーム、外のスライダーという使い方をしていました。昨年はそれで最多勝を獲得しましたが、それだと次の年は通用しないな、と思っていました。そこでインコースの使い方を大事に、そして課題にして考えてキャンプで練習し、実戦で試しながらできたことで実際に抑えることができて最多勝をもう一度獲得できました。打者に対しても昨年と違うデータを出せたので、すごく有効的だったな、と思います」

挽回のチャンスは十分


 岡田彰布監督が就任した昨年は試練を味わった。開幕投手を務めたが春先から大量失点を喫する登板が目立ち、18試合登板で8勝6敗、防御率4.57。責任感の強い男は悩んだだろう。だが、最後に大仕事をやってのける。オリックスと3勝3敗で迎えた日本シリーズ。7戦目の先発に抜擢されると、5回途中無失点の好投で相手左腕・宮城大弥との投げ合いを制して日本一に。岡田監督は優勝インタビューで「最初から最後、7戦目は青柳ということで。今年は3月31日にここ京セラで、公式戦は青柳でスタートしたんですけど。今日、監督室に呼んだんですけど、『青柳もう最後は青柳で締める』ということで」と信頼を口にした。

 巻き返しを狙う今季は好スタートを切れなかったが、まだまだ挽回のチャンスがある。一軍に早期昇格して順調にいけば国内FA権を取得予定で、スポーツ紙記者は「実績がある投手ですし、権利を行使すれば複数球団の争奪戦は間違いないでしょう。ただ阪神にとっても必要不可欠な投手です。30歳とまだまだ全盛期はこれから。先発の大黒柱として活躍してもらわなければ困ります」と期待を込める。

 一軍復帰に向け、状態は上がってきている。24日のウエスタン・リーグのオリックス戦(鳴尾浜)で、7回から救援登板すると3回を無安打無失点。先発で6回1安打無失点と好投した伊藤将と共に存在をアピールした。今月下旬からは交流戦が始まる。昨年は登板機会がなかったが、22年は3試合登板で3勝0敗、防御率0.00。23回2/3を投げて自責点ゼロと好投を続けた。今季も交流戦の登板で復調のきっかけをつかめるか。

写真=BBM