抜群のコントロール



明大・高須は7回無失点で今季3勝目を挙げた[写真=矢野寿明]

【5月25日】東京六大学(神宮)
明大2-0法大(明大1勝)

 投手にとってコントロールに勝る信頼はない。

 明大は今春、開幕から投手陣の台所事情が厳しかった。数字は正直である。4カードを終えて、規定投球回数に達した投手は6校で唯一ゼロ。リーグ最多10投手がマウンドに上がり、5人が先発マウンドを経験していた。

 約2カ月に及ぶシーズンを戦う中で、主戦格へと上り詰めたのが192cm右腕・高須大雅(3年・静岡高)である。明大・田中武宏監督によれば、開幕当初はブルペン待機で、抑えを託す予定だったが、状況が一変した。

「制球力、ボールに力がある。立ち上がりを四球で崩れるパターンが多く、その心配がない一人。配置換えをしました」(田中監督)

 2カード目の早大2回戦で初先発し、7回無失点でリーグ戦初勝利。立大戦からは「エース」を意味する1回戦の先発を任されると、慶大1回戦を5回無失点で2勝目を挙げ、法大1回戦を7回無失点で3勝目をマークした。

 高須は法大1回戦で規定投球回に達して、先発で投げ合った右腕・篠木健太郎(4年・木更津総合高)と並ぶ防御率1.44でリーグトップタイに立った。7回を投げて5安打、9奪三振(3四死球)の安定感であった。

 なぜ、高須は神宮で快投を続けているのか。明大・田中監督は明かす。

「角度があるので、初見では難しいと思います。縦の変化も有効になる。ストレートの質が高いので余計、生きる」


3年生であり、主戦投手としての自覚も十分である[写真=矢野寿明]

 最速153キロの真っすぐは低めに伸びる。鋭く変化するカーブは緩急自在で、フォークの落差も抜群で、スライダーも効果的。25イニング29奪三振が示すように、相手打者としては、的を絞るのが難しい状況である。

「先発をしたいと思っていましたが、任されたら、いつでも行ける準備をしています。明治には良い投手が多いので、その中でも、自分が引っ張っていけるようにしたい」

 明大は法大との最終カードで勝ち点を4に伸ばせば、リーグ優勝の可能性が残る(最終週の早慶戦での早大の結果次第)。3カード目の立大2回戦から法大1回戦まで5連勝と、シーズン中盤以降、チームは上昇傾向にある。

 田中監督は「3年生以下の選手のリーグ戦経験が少ない中で、神宮で結果を出すことで、成長につながる。一球、一打が良い方向に出ている」と目を細める。高須は大学卒業後の希望進路について、言及した。「ドラフト1位でプロに行くのが目標。そこに向けてはまだ、足りない部分がたくさんあるので、全体的にレベルアップしたい」。1回戦の先発投手として、高須が確立したのは今春の最大の収穫と言える。「1試合1試合、全力で投げる」。針の穴を通すほどの制球力が武器の背番号17は、心身とも充実している。

文=岡本朋祐