女性だけで争うラリーレイド「第33回ガゼルラリー」(4月12〜27日、モロッコ)に出場した石橋香織(51)が9日、本紙の取材を受け、総合54位でゴールした大会を振り返った。自身5度目の参戦は、大会初となる電動車両(EV)で総合優勝を争う「4×4/カミオン」クラスへの挑戦だった。トラブルに見舞われながらも、ゴール前日までは総合20位前後を争う実力を発揮。「(電動車の)可能性を感じた」と、大きな成果をつかみ取った。 (田村尚之)

3年ぶりの挑戦

 トヨタRAV4に電動ユニットを組み合わせた新プロジェクトからオファーを受け、石橋が3年ぶりにガゼルへ挑戦した。初日はスタート直前にバッテリー交換を強いられて111位発進。「交換したバッテリーの充電で足りず、(通過義務のある)チェックポイント(CP)を全部回れなかった」と、予想外の滑り出しを振り返った。

 その後は本来の力を発揮した。4度目のコンビを組んだナビゲーター、ステファニー・ゲリーとの息もぴったり。一時は21位まで盛り返したが、最終のマラソンステージで充電システムに問題が発生し、残り三つのCPを通過できず順位を落とした。

トップ10狙える

 ちょっぴり悔しい結果に終わるも、200台が参加した4×4クラスに初めてエントリーした電動車の挑戦には手応え十分だ。「悪路の走破性を含め、大きな可能性を感じた。車高など、いくつか改良すれば(来年には)総合トップ10入りを狙える」と、新プロジェクトへの期待を明かす。

 ラリー好きだった父の影響で、パリダカと呼ばれたダカールラリーに憧れた。「子供のころから、砂ぼこりを上げて走るパリダカが大好き。『いつかは出場したい』と思っていた」。整備士養成学校を卒業し、ラリー車両も作る会社にメカニックとして就職。着実に腕を磨き、世界ラリー選手権に出場するチームのメカニックも経験した。

 転機はガゼルのフェイスブックを目にしたことだった。「みんなの戦う姿に見入った。(競技)ライセンスも必要ないので、『私も出場できる』と思った。何よりスピード競技じゃないのが良かった」

 衛星利用測位システム(GPS)などデジタル機器の使用が一切認められず、地図と磁石と計算尺だけで戦う、昔ながらの魅力にもハマった。1年半の準備期間を経て、2016年にナビとして初挑戦。17年はドライバーとして総合11位に入り、18年には自作車両、19年にはバギークラスで出場した。

裏方さんが好き

 来年は未定ながら、「誰かを支える裏方さんが好き。新しい方が出場するなら、全力で応援したい」と世代交代も思い描く。とはいえ、「大好きな砂漠と真っ青な空。その場にいられることに幸せを感じる」と力説するだけに、まだまだ挑戦は続きそうだ。