◇渋谷真コラム「龍の背に乗って」◇25日 中日1―0ヤクルト(バンテリンドームナゴヤ)

 ディカーソンの来日初アーチで挙げた1点を、メヒア―松山―マルティネスが守り切った。90番カルテットでヤクルトを見事に押し切った。

 被安打3。ほとんど危なげない継投だったが、大塚投手コーチは1度だけマウンドに向かっている。7回1死。11人連続で打ち取っていたメヒアが、サンタナに四球を与えた直後だった。

 「四球は嫌な流れになることもあるので、それを断ち切りたかったのと(6回に)指先にマメができていたのがわかっていたので、状態の確認ですね」

 この時点でメヒアの球数は111球。球の強さは落ちていなかったが、オスナにつながれたら恐らくは清水に継投だった。ただ、大塚コーチにはメヒア続投で乗り切れる確信めいたものはあった。それは「目が生きていたので」。マウンドに行ったからこそ、確かめられたことだった。

 「僕があまり来られるのは好きじゃなかった」ので、頻繁に間(ま)を取るタイプではない。そんな大塚コーチが1死一塁でタイムをかけたのは、前夜の後悔も理由のひとつだったのではないか…。

 「最強のクローザーだから、敬遠なら敬遠でオレに任せろ。そう思ってくれると決め付けてしまいました」

 マルティネスが乱れた延長10回。安打と犠打で1死二塁となったところで、ベンチは村上を申告敬遠して塁を埋めた。サンタナはすでにベンチに下がっており、5番は守備要員の岩田。策としては当然だが、岩田にまさかの死球で満塁となったことで局面は一気に苦しくなった。冷静な策とマルティネスのプライド。マウンドへ向かい、ベンチの方針を伝えてからの方が良かったのではないか…。そんな思いがくすぶっていた。

 「ライデルも含め、みんな本当に良かった。勉強になりました」

 行けば抑える、行かなければ打たれる。そんな簡単なことではない。いつ、誰に、そして何を伝える。タイミング、性格、言葉のチョイス。最後は「目」で確かめたこの日の続投は、ベンチと選手をつなぐ糸も太く、強くしたはずだ。