2024年1〜4月にCREA WEBで反響の大きかった記事ベスト7を発表します。ビューティー・ライフスタイル部門の第4位は、こちら!(初公開日 2024年4月24日)



らくちんだけど、長持ちする髪形は?

 職場でのファッションやヘアスタイルを問わない傾向も強まってきている昨今。企業の「身だしなみ」に対する観点がシフトしてきて、美容師としても、様々な業種で「ヘアスタイルの自由度」が増してきていることを実感します。

「今までと違うヘアスタイルにチャレンジしたい」という意欲が高まっている方も多いかと思いますが、今回は「らくちんだけど、長持ちするスタイル」はどれか、というお話。

 僕は男性美容師なので、生活においてレディースのスタイルを経験したことはありません。しかし僕自身、自分の髪に対してズボラなので、「できれば手入れが楽なヘアスタイルがいい」という気持ちには強く共感しています。

 もちろん、どのヘアスタイルが楽かは一概に言えない部分はあるのですが、今回は僕の独断と偏見で「らくちんだけど、長持ち」しやすいと考えるヘアスタイルをご紹介します!

「髪は長いほど長持ちするが…」前提となるトレードオフ

 ヘアスタイルにはそれぞれメリット、デメリットがあります。

 前提として、ショートヘアよりロングヘアの方が長持ちしやすいです。なぜなら髪の毛は1ヶ月に約1センチ伸びるため、ショートの方がバランスが崩れやすく、ロングヘアの方が伸びても全体のバランスへの影響が少ないからです。

 ですが、髪は長いほど「ドライヤーで乾かす」時間も長くなってしまいます。つまり、「短い髪でこまめに切る」か、「長めの髪でドライヤーに時間をかける」かの選択は、一長一短のトレードオフになるのです。

 では、ドライヤーで乾かす時間の短さをふくめ、らくちんでありながら長持ちする髪形は存在するのでしょうか?

▼レーダーチャートで解説

 今回はヘアスタイル別に長持ちするか否かを含めた「らくちん度」を表したレーダーチャートを作りました。現在多くの女性が取り入れている「メジャーなヘアスタイル」と、「少数派だけど支持率の高いヘアスタイル」を中心にピックアップして、評価しています。

 評価の項目は【長持ち度】【美容師にとっての難易度】【スタイリング】【社会性】【ドライヤー】の5つに分類しました。それぞれの項目に関して、5段階に[難しい] 1→ 5[簡単]と評価しています。

 この評価の定義は、あくまで「どのヘアスタイルが長持ちするか、手入れが簡単か」についてのものなので、パーマによるスタイリングやヘアカラーの要素は除外しています。そのヘアスタイルのファッション性についても解説で触れるだけで、評価には関係ありません。


レーダーチャートの評価項目と評価基準

【長持ち度】

 ヘアスタイルをキープしやすく、美容室に行く頻度を減らせる方が高評価。低いほど髪が伸びてバランスが崩れやすく、すぐカットしたくなる。

【美容師の難易度】

 全国どこの美容室や理容室でもヘアスタイルを再現でき、美容師によってクオリティの差が出にくい方が高評価。低いほど美容師の技術が必要で、当たり外れが起きやすい。

【スタイリング】

 髪質問わずスタイリングがしやすく、少ないアイテムでヘアスタイルを完成させられる方が高評価。評価が低いほどコテ、アイロン等の使い方が難しく、スタイリングにコツがいる。

【社会性】

 年齢や社会的地位に関係なく、誰でもトライしやすいヘアスタイルの方が高評価。また、「スーツを着る場面」などのシチュエーションに左右されず、汎用性が高い方が高評価。

【ドライヤー】

 乾くのが速い方が高評価。評価が低いほど時間がかかる。

ベリーショート

【長持ち度】1【美容師にとっての難易度】2【スタイリング】3【社会性】2【ドライヤー】5


「憧れ、やってみたい」票が多いベリーショート

 女性のベリーショートは「憧れ、やってみたい」と思っている人が多くいながら、なかなかチャレンジできないスタイルです。というのも、人気のあるベリーショートスタイルは、西洋人のような「ウェーブがあって柔らかい髪質」の方が向いています。日本人に多い「直毛でハリのある髪質」だとハードな印象になりすぎてしまいやすいのです。

 さらに仕上がりが「頭の形」と「髪質」に左右されやすいため、美容師の腕も必要となります。ショートが得意な美容師以外には、「これ以上は切れない」と断られることもあります。

 また日本ではこれまで女性政治家やニュースキャスターなどの「バリキャリ層」に支持されてきた髪形でもあります。そのためスーツなどには合いますが、いまだに個性の強いスタイルとされている向きもあり、【社会性】は2としています。

マッシュルームヘア

【長持ち度】2【美容師にとっての難易度】3【スタイリング】3【社会性】2【ドライヤー】4


「眉にかかる前髪」が柔らかい雰囲気の「マッシュスタイル」

 マッシュスタイルは、メンズライクな長さでありながら「眉にかかる前髪」がベースのスタイルです。そのため「柔らかい」「優しい」「可愛い」印象が強くなります。カジュアルな印象のスタイルでもあるため、お堅いビジネスシーンには向きにくいかもしれません。

 【スタイリング】は乾かすだけで形になりやすいので、比較的簡単。ですが、このスタイルの要(かなめ)となる前髪が伸びるのは早いので、【長持ち度】は低めです。

前下がりショートボブ

【長持ち度】2【美容師にとっての難易度】3【スタイリング】4【社会性】5【ドライヤー】4


ショートスタイルでありながらフェミニンな「前下がりショートボブ」

 吉瀬美智子さんに代表される、フェミニンなショートスタイル。「前下がり(後頭部から顔に向かって髪が長くなっている)」の形で、ショートでありながら万人にとってトライしやすい髪形です。

 マメなお手入れが必要で【長持ち度】は低いものの、コテ、アイロンを使わなくてもサマになりやすいため【スタイリング】は簡単。どの年代でも取り入れることができ、時代も問わない、普遍的で【社会性】の高いヘアスタイルです。

 反面、ショートスタイル全般に言えることですが、美容師さんにとっては、得意・不得意が出やすい面があります。

あごラインボブ、あご下ボブ

【長持ち度】4【美容師にとっての難易度】4【スタイリング】4【社会性】5【ドライヤー】3


根強い人気の「あごラインボブ」

 普遍的スタイルのため【社会性】が高く、全国どこの美容師でも再現性が高いスタイル。

 ストレートタッチにすると「今風」になり、ふわっと内巻きにすれば「クラシカル」に、と【スタイリング】を変化させるだけで印象が変わるのもポイントです。

 形の安定性が高く、肩にかかる直前までは伸びても崩れずキープすることが可能なため、短めのヘアスタイルの中でも【長持ち度】が高いです。

 弱点としては、長さの割に【ドライヤー】の時間がかかること。ボブスタイルは厚みが出るようにカットを施すため、毛量が多くなりやすく、特に髪の内側は乾きにくくなります。

外ハネロブ

【長持ち度】3【美容師にとっての難易度】4【スタイリング】3【社会性】4【ドライヤー】3


近年トレンドの外ハネがポイントの「ロブ(ロングボブ)」

「ロブ(ロングボブ)」は外ハネが受け入れられるようになった近年に定番化した、年齢も問わず取り入れられる万能スタイルです。肩で勝手にハネてくれるため基本的には【スタイリング】も楽ですが、髪質によってはイメージ通りのハネにならないこともあります。

 ロブの最大のメリットは、ギリギリ一つ結びできること。寝坊した朝など、いざという時は結べばなんとかなる、という安心感があります。そして毛先が顔に近い長さのため、結ぶか下ろすかを変えるだけでも見た目の印象が様変わりします。

レイヤー、ウルフスタイル

【長持ち度】1【美容師にとっての難易度】3【スタイリング】2【社会性】2【ドライヤー】3


カッコよさが人気の「レイヤー、ウルフスタイル」

 近年特に注目されているレイヤーやウルフは、カジュアル度が強いスタイルです。そのためビジネスシーンには、あまり向きません。また、上手にスタイリングすればカッコよくなる反面、何もしないとボサボサになりやすいため、スタイリング】の難易度も高め。

 レイヤーは段々になっているので、長さがあっても毛量が少なく【ドライヤー】の時間は短くて済みます。ですが、伸びると毛先が重たくなり束感が出にくくなるので、【長持ち度】は低いです。

韓国風くびれロング

【長持ち度】4【美容師にとっての難易度】3【スタイリング】2【社会性】3【ドライヤー】2


近年の「モテ系」スタイルの中で一番人気の「韓国風くびれロング」

 近年の「モテ系」スタイルの中でも一番人気を誇り、特に若い人に支持を得ている韓国風。「大人っぽさ」も兼ね備えていますが「可愛い」印象も強めで、ビジネスシーンにはあまり適さないかもしれません。

 何もしないと凡庸に見えるため、【スタイリング】が必須で、特にこのスタイルの要となる「くびれ」を作るにはコテが重要です。顔回りの動きもコテで強く出す必要があるため、コテを使うのが苦手な方には難易度が高くなります。

 また、基本的には重めにカットされているので、【ドライヤー】の時間も長くなります。

ロング、スーパーロング

【長持ち度】5【美容師にとっての難易度】4【スタイリング】3【社会性】3【ドライヤー】1


定番の「ロング」「スーパーロング」

 ロングの髪で気になるのは、毛先のダメージ。定期的に切ることを推奨しますが、毛先の状態が気にならないのであればカットの頻度は減り、【長持ち度】はかなり高くなります。

 ロングヘアを選ぶ層には「ヘアスタイルは変えず、ずっとロングのまま」という方が多いです。【ドライヤー】には時間がかかるものの、慣れてしまえば気にはならないようです。

 ですが、「長い髪」は、案外人の目にとまります。特にスーパーロングは「少数派で個性的」と取られることも多いので、【社会性】の評価は低めにしました。

筆者が選ぶ、「らくちん」な髪形BEST3

 これらを総合して、「らくちん」な髪形をランキングにしてみました。

【1位】あごラインボブ、あご下ボブ

 髪の長さに対しての【長持ち度】が高く、スタイリングも安定。TPOを問わないボブは万能です。

【2位】外ハネロブ

 短めでありながら、忙しい朝でもさっと結べるメリットは大きいです。残念ながら【長持ち度】はやや低いのですが、【ドライヤー】で乾かすのにかかる時間が短いのは魅力的。

【3位】ロング、スーパーロング

 ドライヤーの手間を度外視できれば、美容室に行く頻度を劇的に減らすことができます。

 いかがでしたか?

 あくまで「らくちんだけど、長持ちするスタイル」についてのお話でしたが、今後の髪形選びの参考になれば幸いです。

文・イラスト=操作イトウ