「逮捕まで時間があったので、じっくり口裏合わせをしていたのでしょう。無駄な抵抗ですがね」(警視庁担当記者)。上野の飲食店経営者・宝島龍太郎さん(55)と妻の幸子さん(56)の遺体が栃木県那須町の河川敷で遺棄された事件で、最後に逮捕された2人のことだ。逮捕から3日経ってもまだ2人は犯行を否認しているというがーー。

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店舗経営を任せてもらえなかった不満が動機か?

 6人の容疑者が芋づる式に逮捕された今回の事件。当初は末端の容疑者らが、「Aさんに頼まれた」「依頼者は下の名前しか知らない人」などと供述したため、計画立案者の顔が一向に見えてこず「黒幕は誰なのか」と騒がれ続けた。

 その間、黒幕をめぐっては「トラブルを抱えていた上野の飲食店関係者か」「背後に暴力団がいる」など様々な憶測が流れたが、蓋を開ければ身内にいた。警視庁は5月6日に逮捕した宝島さん夫妻の長女の内縁の夫、関根誠端容疑者(32)が事件を主導したとみている。

「関根容疑者は宝島さんから系列の店を4〜5店舗任されていたが、やりたいようにやらせてもらえない不満を募らせていた。今年に入って関根容疑者の発案で新規オープンしたお好み焼き屋もトラブルの一つ。繁盛したものの、宝島さんから要求される“上納金”が高かったことに関根容疑者は納得できず、周囲に『辞めてやる』と話していた。宝島さん夫妻を邪魔に思った関根容疑者が佐々木光容疑者にカネを渡し、実行部隊を集めさせたと見られている」(警視庁担当記者)

運河を見下ろしながら夜景を楽しんでいた

「指示役」の佐々木容疑者から「仲介役」の平山綾拳(25)を経て、「実行役」の韓国籍の姜光紀(20)と元俳優の若山耀人(20)両容疑者をリクルート。事件当日の4月15日、品川区東五反田の空き家で待ち伏せさせた。

 そこに宝島さん夫妻を誘き出したのが、関根容疑者自身と夫妻の知人で不動産会社役員の前田亮容疑者(36)である。午後9時半頃、前田容疑者が手配したレンタカーに、関根容疑者と夫妻が乗り込み上野を出発。

「4人は11時頃には品川区東品川の天王洲アイル駅近くまで移動して下車。この間、幸子さんだけを車の近くに残し、男3人で運河を見下ろしながらたばこを吸っている様子が防犯カメラに映っています。3人は夜景を楽しむような寛いだ雰囲気だった」

 30分後に4人は再び出発。空き家へと向かうのだが、

「途中、五反田駅あたりで関根容疑者だけがレンタカーを降りているのです」

途中下車して車を乗り換えた後で再び「運転手をチェンジ」

 残る3人が乗ったレンタカーが空き家に到着したのは0時頃。そこで宝島夫妻と一緒に車を降りたところまでは前田容疑者も認めているのだが、

「突然、隠れていた2人が襲ってきたので、怖くなって車に乗り込み一人で逃げたと供述しています。ただ、逃げた後も110番をしていない。ありえない話」(同)

 同様に不自然な行動をしていたのが関根容疑者だ。五反田駅付近で降りた後、近辺に予め置いていた自分名義の白いベンツに乗り込み、空き家近辺に向かっていたのだ。そればかりか、

「犯行が行われていたと思われる時間帯に、空き家の周りをグルグル回っているのです」(同)

 一方、実行部隊の監視役を担っていた佐々木容疑者も空き家近辺を歩いていたのが確認されている。午前2時頃、レンタカーは佐々木容疑者をピックアップして上野へ。関根容疑者が乗っていた外車も、揃って上野駅近辺のパーキングに停車するのだが、

「いつの間にか車の運転手が変わっていて、ベンツを前田容疑者が、レンタカーを関根容疑者が運転していた」(同)

指示役の佐々木容疑者は「完落ち」

 つまり黒幕などと騒がれて続けたわりには、最初から最後まで怪しい動きをしていたわけだ。

「防犯カメラを張り巡らせた東京のど真ん中でこんな大胆な犯行に及びながら逃げ切れるわけがない。ただ、関根容疑者も前田容疑者同様、『自分は知らない』と踏ん張って否認を続けています」(同)

 だが、無駄な足掻きである。直接指示した佐々木容疑者が既に“完落ち”しているからだ。

「当初、『非通知設定の知らない番号から電話がかかってきて、遺体の処理を依頼された』と供述していた佐々木容疑者ですが、すでに『関根容疑者からカネを積んで依頼された』とすべてうたっています」(同)

 当初は「トクリュウを使った複雑な犯行」などと騒がれた今回の事件。蓋を開ければ、犯行現場に夫妻を誘き出した関根容疑者がハナから怪しかったわけで、黒幕から末端までボロ出しまくりの杜撰な犯行だった。死体損壊容疑で逮捕された6容疑者はこれから順次、殺人容疑でも再逮捕される見通しだ。

デイリー新潮編集部