日本では、2025年にかけて団塊の世代の退職に伴う後期高齢者の増加で、本格的な超高齢社会になるといわれています。そして、その社会構造の変化が生みだすさまざまな影響について「2025年問題」として話題になっているのです。   この記事では、2025年問題を概観したあとで、特に社会保険料に関する年収70万円の壁について解説します。

2025年問題とは? さまざまな問題を概観する

2025年に日本は高齢者人口の急激な増加という大きな課題に直面します。その年、戦後のベビーブームで誕生した世代がすべて75歳を迎え、本格的な超高齢社会に突入するのです。
 
この変化は、介護や医療分野での労働力不足を一層深刻化させることが予想されます。2025年までには、介護職員は約243万人が必要になると予測されていますが、現状の確保ペースでは需給ギャップに対処できない状況です。
 
さらに、経済面ではデジタル変革(DX)の遅れにより、最大12兆円の経済損失が生じる可能性があると警告されています。このデジタル化の遅れは、国際競争力の低下を招きかねません。
 
また、中小企業における後継者不足も深刻な問題として浮かび上がっています。2025年までに70歳を超える経営者は約245万人に上ると見られていますが、その半数が後継者を確保できていません。
 
そのため、多くの企業が廃業に追い込まれ、結果として650万人の雇用と22兆円のGDPが失われるリスクが指摘されています。2025年に特に問題になるのが、社会保障費です。後期高齢者の増加により、これらの費用はさらに上昇する一方、それを支える現役世代の数は減少します。
 
このため、現役世代の負担軽減策が2025年問題の重要な課題となっています。
 

年収の壁が70万円になる?

日本の高齢化が進む中、社会保障費の増加に対応するため、政府は社会保険の適用対象を広げる動きを加速しています。この政策変更の一環として、2025年までに年収70万円という新しい基準が設けられる可能性が浮上しているのです。
 
この変更が施行されれば、これまでの130万円や106万円といった年収の範囲内で働いていた人々も社会保険の対象となり、その結果、彼らの収入から社会保険料が差し引かれるようになります。
 
また、この政策は、社会保険料の基盤拡大を目的としていますが、実際には労働市場にさまざまな影響を及ぼすことが懸念されます。年収70万円を超えると社会保険料が発生するのであれば、それを避けるために労働時間を調整し、収入を70万円以下に抑える働き手が増える可能性があるのです。
 
このような状況は、労働市場の流動性を低下させ、経済全体にとってもマイナスの影響を与えかねません。
 
この政策変更により、より多くの人々が社会保険の対象となることで、一時的には社会保障費の財源確保に貢献するかもしれません。しかし、一概には言えませんが、長期的には、労働市場の柔軟性を損ない、個々人の生活にも重大な影響を及ぼす可能性もあります。
 

2025年問題についての抜本的な対策を

2025年問題は、日本社会全体に多大な影響を及ぼす可能性があります。医療・介護体制維持だけではなく、後継者不足による廃業で経済が縮小していくのです。
 
特に社会保険料の増加は、多くの労働者に直接的な影響を与えるでしょう。社会保険料の負担増によって、労働時間を制限する人が増えないような、抜本的な対策が求められているのかもしれません。
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
 
監修:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー