90歳でも筋肉は鍛えられる

手術後は少し麻痺が残り、母は車椅子の生活に。身体はすっかり弱っていましたし、寝たきりになるのは時間の問題だと覚悟していたのです。手術後しばらくしてリハビリ病院に転院したのですが、ここからの母の回復力には目を見張るものがありました。

母は面白い人で、リハビリがとにかく楽しくて仕方なかったようです。大正生まれでスポーツジムに行ったこともありませんから、リハビリでいろんな器具を使うのが新鮮だったのでしょう。

なかでもウォーキングマシンやエアロバイクがお気に入りで、徐々に負荷を重くしてみたり(笑)。入院中は、毎日3時間くらいトレーニングを行っていました。

家で手仕事しかしていなかった母が? と意外でしたが、考えてみれば、私が勝手に母はスポーツに関心がないと思い込んでいただけなんですよね。70代の時には私と一緒に山にも登っていたので、また山に行こうという目標が本人のモチベーションになっていたのだと思います。

それにしても、90歳のほっそりとした脚にしっかりとヒラメ筋がついた時は、ビックリしました。「90歳でも筋肉を鍛えることができるんですね」とリハビリの先生に母の脚を見せたら、先生は「あら、本当だ」って驚いていましたけど(笑)。

最終的に母は、杖で歩行できるまでになりました。総合病院の先生にも杖で歩く母の写真を送ったところ、「ここまで回復するとは思わなくて、みんなで泣きました」と言ってくださったんです。

つまり症状は思った以上に重く、母がそれを上回る努力をしたということでしょう。