甲子園球場では左中間席へ放り込むイメージが必要

1986年のバース以来、阪神から本塁打王が出ていないのも生え抜きのスーパースターを出現させにくくしています。

92年のラッキーゾーン撤去後にホームランを30本の大台に乗せたのは金本(2004年・34本、05年・40本、07年・31本)、ブラゼル(10年・47本)だけで、生え抜き選手は一人もいません。

ボールの問題もあります。2000年〜2010年までは反発係数の高いボールを使用しており、明らかな打高投低の時代でした。

統一球が導入され「飛ばないボール」の2011年、12年の2年間を経て、今はまたボールが少し飛びはじめていますが、金本らの時代ほどではありません。

私の小さな体であっても、阪神の四番打者として求められたのは打率3割ではなく、ホームランでした。40本を打つためにどうすればいいかを日々考えて、バットを振り続けました。

通算868本塁打の王貞治さんの日記に「センターバックスクリーンにホームランを打つイメージで打て」と記していたのが印象強く覚えています。長距離砲であっても打撃の基本はセンター返しというわけです。

でも、甲子園球場で左打者がホームランを量産するには、バックスクリーンではなく、左中間席へ放り込むイメージを持たないといけません。

打撃練習ではショートの頭の上にいい打球を飛ばすことを意識していました。打率3割で20本塁打は簡単ですが、40本以上打って、なおかつ打率3割も維持するのは甲子園が本拠地では難しいのです。

※本稿は、『虎と巨人』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。