列車の発着時に駅で流れるメロディー、いわゆる「駅メロ」。その多くは、時代背景や地域特性、駅が持つイメージなどによって選曲されています。一方でそうした駅メロに惹かれ、その魅力を著書『駅メロものがたり』(交通新聞社新書)にまとめたのが、自身が「乗り鉄」でもある昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員・藤澤志穂子さんです。藤澤さんによると、調べた限り、<最古の駅メロ>と思われるのは豊後竹田駅(豊後竹田市)の「荒城の月」だそうで――。

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JR福島駅で甲子園の歌?

駅で列車が発着する際のメロディー、いわゆる「駅メロ」に魅せられて久しい。

最初のきっかけは、私が全国紙の支局長として秋田に赴任する際、東北新幹線で通過したJR福島駅で「栄冠は君に輝く」を耳にしたことだった。全国高等学校野球選手権大会の歌である。

「甲子園の歌がなぜ福島で?」。


『駅メロものがたり』 (著:藤澤志穂子/交通新聞社新書)

その答えは、作曲した古関裕而(1909-1989)が福島市出身だったから。

東日本大震災からの復興の願いも込めて、「古関で街おこし」と考えた地元の青年会議所が、長男の正裕さんの協力も得て活動を始め、駅メロのみならず、古関と妻の金子との生涯を紹介するNHK朝の連続テレビ小説「エール」(2020)にまで結実させた。