江戸時代の仏像かと思ったら平安時代のものだった−。各務原市那加雄飛ケ丘町の薬師寺で所蔵する観音像が、修復作業の過程で平安時代後期に制作された仏像とみられることが分かった。村上太胤(たいいん)住職(77)は「思いもしないことで驚いている。千年近くの歴史がある観音様で、慎重にお守りしていきたい」と話す。

 修復が完了した「聖観世音菩薩像」は、一本の木材から彫り出す「一木造り」でできている。高さは80・5センチ。村上住職によると、1975年ごろに先代が静岡県・西伊豆町の廃寺となった寺院から譲り受けた。損傷が激しかったことから、2021年から2年かけて茨城県の仏師の工房で修復作業が行われた。

 その中で塗膜などを剥がしていったところ、平安時代の仏像の要素が確認されたという。頭の十一面観音は後世になって取り付けられたものだと判明した。市文化財審議会の委員も務める東海学園大の小野佳代教授(53)は「ふっくらとした丸顔の優しい表情や動きの少ない直立の体勢などが平安時代後期の仏像の特徴を示している」と説明する。

 市文化財課によると、市内で確認できる範囲では最古級の仏像となる。寺は市指定文化財の申請に向けて準備を進める。

 寺では4月29日、観音像の開眼法要が年大祭に合わせて営まれ、地域住民ら約100人が集まった。祭壇に祭られた観音像に向かって村上住職が魂を込めたほか、しの笛奏者の佐藤和哉さん(42)が「さくら色のワルツ」などを披露。出席者は観音像の前で静かに手を合わせた。

 観音像は、県指定文化財の薬師如来坐像(南北朝時代)と市指定の不動明王像(室町時代)とともに、6日まで本堂で特別公開される。時間は午前9時から午後4時まで。村上住職は「3体の秘仏が並ぶ貴重な機会。ぜひお参りしてもらえたら」と語った。