フィギュアスケート男子の宇野昌磨(26)=トヨタ自動車=が9日、現役引退を表明した。18年平昌、22年北京と五輪2大会でメダルを獲得した宇野の素顔を担当の高木恵記者が「見た」。

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 宇野はシャイな少年だった。ただし、氷上は別だった。観客の視線をくぎ付けにする「表現の力」を、存分に発揮してきた。「地上で踊るのは恥ずかしい。人に見られるっていうのが嫌で。でも氷の上で踊るのは恥ずかしいことじゃないというのがあった」。そう話したことがあった。

 幼い頃にダンス、水泳、テニス、ゴルフと様々な習い事に通った。人前で踊ることが苦手で「ダンスとバレエは本当に嫌いだった」。準備体操の段階で寝てしまったことも一度じゃない。小学生の時は大勢の前で創作ダンスを踊るように言われ、恥ずかしさから学校を飛び出したこともあった。

 普段は野菜嫌いなマイペース。リンクに上がると途端に顔つきが変わり、演目の世界に入り込む。「スケートというものが自分に自信を与えてくれた」。人前でしゃべることも苦手だったが、今ではトークショーを盛り上げる話術もある。

 「記憶に残るスケーターになりたい」と常々口にしてきた。毎シーズン、様々なジャンルのプログラムに挑んできた。その度に新たな表現の扉を開いてきた。プロスケーターとして、これからも滑りを人々の記憶に刻んでいく。(2015年〜フィギュアスケート担当・高木 恵)