働きながら介護職員初任者研修を受けてわかった学び7つ【実践編】

こんにちは。なるほど!ジョブメドレー編集部の山口です。私たちは医療・福祉分野で働いている・働きたい人に役立つ知識や、これらの分野に興味を持ってもらえるような情報を届けるべく、日々取材や記事編集に取り組んでいます。

今回は、実際に介護職員初任者研修を受けなければわからなかった7つの学びと驚きをお届けします。

介護職員初任者研修の様子(座学)

学び1 介護保険の手厚さに感心する

まず最初に学ぶのが「1.職務の理解」で、介護職がどんな場所でどんな仕事をするのか、その大本である介護保険制度はどういうシステムなのかを学びます。

介護保険制度で提供される介護サービスは、介護予防を含めて26種類54サービスあります。児童福祉サービスは19種類(認定こども園を含めると20種類)、障害福祉サービスは18種類であることを踏まえると、その充実度がわかります(子どもや障がいのある人への支援もさらに充実してほしいですね)。

介護保険サービスの充実度
介護ニーズと利用できるサービス例。要介護(支援)認定後、ケアマネジャーを中心にさまざまなサービスが連携して介護生活を支える

介護が必要な人ひとりに対し、要介護度の認定、要介護度や疾患、介護が必要な頻度などさまざまな要素を考慮してその人に適したサービスを選び、どんな健康状態を目指してどのサービスをどれくらい受けるのかを決めるケアプランを作成し、各サービス事業所の職員が実際に介護を提供し、生活の様子などを定期的に観察して適宜ケアプランを修正し……。いわば“PDCA”を回しながら介護は続きます。

この「実際に介護を提供する職員」一人ひとりが介護職で、サービスを選定しケアプランを立てるのがケアマネジャーです。サービスの多様性と、これだけのサービスを把握して関係者をまとめあげるケアマネジャーのすごさがわかりますね。

学び2 老化とその影響に衝撃を受ける

研修では、高齢者の心身の変化=老化についても学びます。視覚、聴覚、嚥下(飲み込み)、歩行などさまざまな機能が低下し、感情の制御もききにくくなります。総じて「鈍化してもろくなる」という印象なのですが、そのなかでも2つ、驚いたことがありました。

まずは「褥瘡」のできやすさ。「じょくそう」と読み、いわゆる床ずれです。褥瘡は深くなってしまうと強い痛みをともなうため、皮膚の発赤(ほっせき)など進行する前の段階で気付き、体位変換や床ずれ防止のシートなどで予防することが大切です。

この床ずれ、どんな原因でできると思いますか? 

その一つが「シーツのしわ」だそうです。皮膚が弱くなっているとはいえそれほどまでと衝撃でしたし、ベッドメイキングでシーツにしわができないよう徹底する理由も目からウロコでした。見た目を整えるだけでなく、安全上の意味もあったんですね。

誤ったベッドメイキングのイメージ
※イメージ:もしこんなふうにベッドに乗ってシーツをかけたり、端を合わせずに引っ張るとしわがたくさんできてしまい褥瘡を引き起こすことも

もう一つの衝撃は「骨折」。高齢者は骨粗鬆症になっていることも多く、転倒で骨折しやすいのは知られていると思います。現実にはもっと些細な動作――くしゃみで肋骨が折れ、おむつ交換で大腿骨を骨折するといった具合で、あらゆる動作にリスクがあります。腕力だけに頼った力ずくの介助は本当に危険ですし、不適切な介助姿勢は介護職員のケガや腰痛にもつながるので百害あって一利なしです。

「誤った介護は利用者を壊す」という講師の言葉が重く響きました。テキストの知識だけでなく、現場を経験した人のエピソードを聞けることがこの研修の大きな魅力だと思いました。

学び3 虐待は身近に潜んでいるとわかる

悲しいことですが、介護に関わる虐待のニュースは多くの人が耳にしたことがあると思います。虐待というと身体的な暴力や明らかな暴言など、非常に追い詰められた状況が想起されるかもしれませんが、研修を受けて実は良かれと思ってやってしまいそうな行動も虐待になり得る、という発見がありました。

例えば物忘れが増えてきた高齢者を心配し、本人にお金を持たせないようにして家族や介護職員が管理する、といったことは容易に想像できる対応ではないでしょうか。しかし「日常生活に必要な金銭を渡さない・使わせない」「年金や預貯金を本人の意思に反して使用する」などは経済的虐待にあたります。

ほかには乾燥などで皮膚をかいてしまうことを防ぐためにミトン型の手袋を着用させることも、緊急度が高くない・別の方法がある・長時間にわたっているといった場合は身体拘束とみなされることがあります。

介護における虐待・身体拘束の禁止

善意から始まる行動が人権軽視になってしまわないよう、本人の意思確認や、虐待に関する知識がとても重要ですね。

介護をするときの同意確認
どんなに慣れている介助や何度も経験したやりとりであっても、これからすることの説明と同意確認は欠かせない

学び4 危うい介助や動きに気付ける

実習では、講師の手本を見ながら受講生が互いに介助を練習します。この“自分も介助を受け、人の介助の様子も見る”ことがとっても重要なのだと感じます。

ベッドメイキングでは、何人かに1人やたらと仕上がりがきれいな人がいたりします。講師から教わるだけでなく、ほかの上手な人の動きを目で盗むことができるのも教室でおこなう実習ならではの良さです。

介助で危ない動きや、自分がされたら嫌だなという動きに気付けたのも利点でした。実習も後半になると、ベッドから体を起こす(仰臥位から端座位にする)際に首を変に抱えて動く人がいたら自然と受講生同士で声をかけていました。介助されたときに頭を押さえるように手を置かれたり、進行方向と逆向きに力をかけられたりしたときに動きにくさや不快感があるとわかり、自分が介助するときは避けようと思えたのも良い勉強になりました。

学び5 介護職と医療職の役割分担に安心する

さて、ここまで驚きや注意点を中心に書きましたが、研修を受けてわかった安心感についてもお伝えしようと思います。まずは、介護職はできること・できないことの線引きがとてもはっきりしていて、役割が明確な仕事である点。

この「役割分担」には主に2つの面があります。一つは介護保険サービスの範囲を超えないこと、そしてもう一つは医療行為をしないことです(前者は介護保険制度の授業で勉強します)。

例えば爪切りでは、爪や皮膚に異常がない場合の爪切り・やすりがけは介護職員がおこなえます。しかし巻き爪や爪水虫(爪白癬)、厚くなっているなど爪や周囲に異常がある場合は医療行為となり、看護師による処置が必要です。体温測定では電子体温計でわきの下か耳で測ることは介護職員にもできますが、舌下や直腸で測ることはできません。

介護職員にできること介護職員ができない医行為
体温測定
  • 水銀体温計または電子体温計でわきの下で測る
  • 耳式電子体温計による外耳道での測定
  • (手術中の)直腸検温
  • 口腔検温
軟膏の塗布 異常のない皮膚への塗布 褥瘡や粘膜への処置
内服介助 あらかじめ医師や看護師の指導を受け、利用者自身で内服することが難しい場合の一包化された薬の内服介助
  • 利用者の容態が安定していないとき
  • 薬の誤嚥の可能性があるとき
爪切り爪や周囲の皮膚に異常がない場合の爪切り、やすりがけ
  • 巻き爪のケア
  • 糖尿病などで専門的な管理が必要なとき
歯みがき重度の病気などがない日常的な歯みがき、綿棒やガーゼを用いた口腔ケア重度の歯周病などがある場合の口腔ケア

※痰の吸引(喀痰吸引等研修)など、一定の研修を受けることで介護職員が例外的に実施できる行為もあります

このように医療行為に該当すること・しないことは厚生労働省の通知で具体的に示されているので、「身体介護でここまでやっていいのかな」とはあまり心配しなくていいんです。身体介護に限らず「気になることがあったらすぐ管理職や医療職に報告・共有すること」は複数の講師が繰り返し強調していたことでもあります。

多職種連携で支えられているのは、利用者だけではないんですね。

学び6 訪問介護は意外と始めやすいとわかる

現場を知る講師の話を聞くなかで、研修前に感じていた「初任者研修に受かれば訪問介護で働けるとはいえ、いきなり一人でこなせるのだろうか」という漠然とした不安も解消されました。

介護や老化の基礎知識を学ぶとある程度介護の難易度の想像がつくようになりますし、研修内で練習できる介助は限られていることもわかります。例えば「意思疎通や排泄に問題がなく生活援助中心なら自分にもできそう」と思える一方、重度の認知症で会話が困難だったり、マヒや障がいで全介助が必要だったりしたら……? と怖くなるものです。

しかし実際の現場では、いきなり初任者研修修了者に要介護度の高い利用者を担当させることはないそうです(そりゃそうかと思いつつ、講師や職員から話を聞くと安心します)。事業所で決まっている手順書に基づき、掃除や料理など生活援助中心のケースから入ることがほとんどだそう。パートタイムなど週1日から始める選択もしやすく、ダブルワーク希望の人や、仕事に慣れてからフルタイムの正職員に転職したい人にも適しているのではないでしょうか。

学び7 介護を人に頼ろうと思える

基礎的な介護技術を学んだのになぜ? と思われるかもしれませんが、介護職員初任者研修を通しての一番大きな学びは「介護の当事者になったらすぐに人に頼ろう」と考えられるようになったことです。

知識・技術面で介護の基礎を習ったので、以前より自分で対応できることは増えました。一方で、介護サービスはいくつもの施設やたくさんの専門職が関わって初めて機能していること、身体介護は健康な成人同士でも練習しないと危ないくらいには難しく、繊細な面があることもよくわかりました。

とくに排泄介助や入浴介助は難しく、利用者の羞恥心や自尊心にも大きく関係します。介助する側も心理的負担があるなかで、他人同士でプロとしてなら仕事・サービスとして割り切れることでも、精神的に距離の近い家族であれば互いに葛藤やストレスを抱えることは想像にかたくありません。

修了することで就職のチャンスが広がるのはもちろん、いざというときの心構えができることが、とても大きな財産になりました。仕事にも生活にも役立つ介護職員初任者研修、ぜひチャレンジしてみてください!

介護職で就職・転職を考えている方へ|介護職員初任者研修を取得しませんか?

ジョブメドレーが運営する「ジョブメドレースクール」では、都内最安水準で介護職員初任者研修講座をご提供。資格取得後は豊富なジョブメドレー求人をもとに、専属スタッフのキャリアサポートも受けられます。受講料無料になる特待生制度*もご用意しています。

*適用には条件があります

【詳細はこちら】ジョブメドレースクール