コンビニパン、レベル上がってます。

 ファミリーマートのパンコーナー「ファミマル Bakery」のコンセプトは、“えらべるおいしさ”と“うれしいおいいしさ” 食文化研究家のスギアカツキです。『食は人生を幸せにする』をモットーに、食トレンド、スーパーマーケットやスタバ、ダイエットフード、食育などの情報を“食の専門家”として日々発信しています。

 コンビニエンスストアが絶好調です。インバウンド消費に加えて、各社が独自の差別化戦略を打ち出したことで、2024年4月に発表された大手3社の営業利益(事業利益)は過去最高を更新しました。

 お弁当、お惣菜、スイーツ、アイスなど、商品を見ていくと、驚くほど魅力的に進化していることに気がつくでしょう。しかも最近はコスパを実感するオリジナル商品も多く登場し、“スーパーよりも高い”という印象もかなり薄れているのではないでしょうか。

ファミマのパンの“圧倒的存在感”

 ファミリーマートのベーカリーコーナー。いったい何がスゴイのでしょうか…… そして今回特に注目したいのが、ベーカリーコーナー。お手頃な総菜パンや菓子パンがずらりと並び、おにぎり以上に売り場面積がぐんぐん広がっています。

 そしてその実力を3社で比較していくと、ファミリーマートの圧倒的な存在感に気がつきました。えっ、そんなに違うの? セブンもローソンもおいしいのあるよ……と思っている人もいらっしゃるでしょう。

 そこで今回は、ファミマのパンにおける強みや魅力にせまり、そのスゴさがどこにあるのかを考えてみることにしましょう。

ファミマは「バター」と「生クリーム」で独自の世界を作っている

 生クリームとバターを使用したパンが多く、パッケージにわかりやすく打ち出している はじめに結論から言いますと、ファミマのパンが愛される理由は、「バター」と「生クリーム」という2つの食材を生かし、それをわかりやすく打ち出している点にあります。

「えっ、パンだったら当たり前じゃない?」と思われそうなことかもしれませんが、単に使っているだけではありません。

 バターと生クリームによって“ファミマならではのおいしい世界観”を作りあげているのです。いったい、どういうことなのか、商品を紹介しながら説明していきたいと思います。



クロワッサンシリーズの本気度が高い

 (左上から)「バタークロワッサンメロンパン」 (145円)、「焦がしバターのクロワッサン」(118円)、「生クロワッサン ダブルチョコ」(145円) クロワッサンが再びブームになりつつある今、ファミマではヤマザキとタッグを組み、さまざまなクロワッサン商品を生み出しています。

 例えば、メロンパン生地を組み合わせた「バタークロワッサンメロンパン」(145円)、バターがポイントの「焦がしバターのクロワッサン」(118円)、しっとりとした新しい食感が特長の「生クロワッサン ダブルチョコ」(145円)。

 目新しい素材を使っているのではなく、バターと生クリームでいつもとちょっと違う、しっかりおいしそうなクロワッサン商品を開発しているのです。

 クロワッサン生地を使った話題の商品は、ローソンにもあります。それは、「バター香るパンスイス チョコ&カスタード」(160円)。

 ローソンから発売されている「バター香るパンスイス チョコ&カスタード」(160円) 層が前面にくるようにクロワッサン生地を乗せて焼き上げる進化系クロワッサンとして昨年からじわじわ注目されているパンスイスをいち早く商品化しています。

 このパンは確かにおいしいのですが、世界観を作るまでに至っていません。

 ファミマのクロワッサンには、ユニークな商品も。

 「クロワッサンサンド チャーシュー&たまご」(198円) チャーシューとたまごをサンドした「クロワッサンサンド チャーシュー&たまご」(198円)は、専門ベーカリーでは並ばないようなおいしいB級感ある商品。コンビニらしい発想の組み合わせでしょう。



「生コッペシリーズ」で新ジャンルを確立

 「生コッペパン コロッケ」(185円)、「白生コッペパン カスタード&ホイップ」(138円) クロワッサン以上に大ヒットしているのが、生クリームを練り込んで焼き上げる「生コッペシリーズ」。2023年2月からの約1年で累計販売食数1億2千万食を突破した記録している、懐かしいけれど新しいコッペパンです。

「パンは“生”でうまくなる!」をコンセプトに開発され、“しとふわぁ” “しともちぃ” “しとむちぃ” の3種類の食感があり、それぞれパッケージに記載されています。

 コロッケパンには総菜の存在感に負けない“しとむちぃ”(ムチムチ感)を、繊細なクリームをはさんだタイプにはあまく柔らかいクリームが口の中で長く味わえるように“しともちぃ”(モチモチ感)を採用するなど、具材によって最適な生地を使い分けています。

 このように、1つのシリーズで楽しい世界を作りあげる開発スタンスが、パンにおいてヒットを生み出す条件とも言えるでしょう。

 生クリーム生地には3種あり、食感がそれぞれ違います ごちそう感のあるコッペ商品はセブンイレブンでも発見することができます。「愛媛県産せとか&ホイップ」(203円)は旬の柑橘を使用したふんわり食感のコッペパン。

 「愛媛県産せとか&ホイップ」(203円) コンビニの王者セブンのパンは十分においしいものの、食べ心地を期待・想像する楽しさまで提案していないスタンスは、ファミマとのちがいと言えるでしょう。もちろんどちらが好きかは人それぞれです。

選ばれる決め手は、想像できるわかりやすさ

 ローソンの「じゅわバタ塩メロンパン」(160円)はおいしい。でも、いろいろ詰め込み過ぎていてどんな味でどんな食感なのかわかりにくい……? ファミマのパンが秀逸なのは、シンプルながらも個性的な商品設計(例えばバターを使ったクロワッサンの中で一つだけ新しい要素を加える)でありながら、食べる前においしい想像がしやすい点にあります。

 あまりに長いネーミングはときとして成功することもありますが、どんな味がするのかわからなくなってしまうことも。

 子どもからお年寄りまで、作り手の想いや楽しさがきちんと伝わるファミマルベーカリー。今後も注目していきたいところです!

<文・撮影/食文化研究家 スギアカツキ>

【スギアカツキ】
食文化研究家、長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)好評発売中。著書『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)が発売中。Instagram:@sugiakatsuki/Twitter:@sugiakatsuki12