帝人は27日、主に先天性心疾患を持つ子どもの心臓手術用の修復パッチを6月に発売すると発表した。特殊な繊維技術で、心臓への縫合後も成長に合わせ拡張する。心臓の成長時に面積不足となって数度の再手術を要する既存品より患者の負担軽減になる。開発中には人気作家の池井戸潤さんが取材し、小説「下町ロケット ガウディ計画」に登場する心臓の人工弁技術の題材ともなった。

 ニット生地製造を手がける福井経編興業(福井市)や大阪医科薬科大と協力し、2014年に開発に着手。23年に厚生労働省の製造販売承認を取得した。新たな修復パッチ「シンフォリウム」は帝人子会社が6月12日から医療機関に販売する。

 修復パッチは、幼少時に手術で心臓に縫い付けて血液循環を正常化させる役割がある。現状では動物由来の組織などでつくる製品が多く、成人までに数回程度、交換の再手術が必要だという。

 新製品は、体内で吸収される糸とされない糸を編み込んだ構造で、分解されずに残った糸の編み目構造が成長とともに拡張。再手術の回数を減らせると期待される。