「どうやったらお客さんを驚かせられるか? そこしかないんですよね」。映画やドラマ、舞台をはじめ、最近では興味があったという監督業にもチャレンジするなど、さまざまな角度から期待される若き才能・中川大志。ジャンルを問わずに対応できる柔軟な表現力は言わずもがな、彼の芸事に向き合うエネルギーは周りが目を見張るほど。

今回はそんな中川に、30年続く岸谷五朗・寺脇康文主宰の演劇ユニット「地球ゴージャス」最新作『儚き光のラプソディ』の出演が決定。「本当にうれしかった」という裏話や、30代に向けて中川がこれからチャレンジしたいことなど、素直に語ってもらった。

写真/バンリ

◆「この先も舞台、生の演劇はやり続けたい」

──中川さん自身初となる舞台で主演をつとめた『歌妖曲』(2022年)から約1年半。圧倒的な存在感とパフォーマンス力で「舞台俳優」としての顔も確立され、「次の舞台はまだか」と囁かれるほどでした。

10代のときから「舞台をやってみたい」という憧れがあって、ずっと生のエンタテインメントが好きでした。よく観劇にも行っていたのですが、一昨年にようやく念願が叶ったという感じですね。

──なにか新たな発見、学びはありましたか?

そうですね、前回の舞台は本当にわからないこと、初めてのことだらけだったので、(舞台の世界に)足の爪の先は踏み込んだかなと(笑)。それがこんなにも大きいことなんだなというのを経験できて良かったです。役者として今年で15年目になるのですが、まだまだこんなにもできないこと、悔しいこと、ワクワクすることがたくさんあるんだなというのを知りました。

だからこそ、裏側も含め、演劇に携わる方々に更にリスペクトを抱くようになりました。演劇は人の力を一斉に「ドン」と集結させて作り上げるものなので、そういう一瞬の儚さというか、時間を積み上げる尊さを実感しました。この先も舞台、生の演劇はやり続けたいな、と思ったのが一昨年の舞台でしたね。

──そして今回、地球ゴージャスで再びその世界に帰ってきます。岸谷さんが前回の舞台を観劇していたこともあり、キャスティングに繋がったのだとか。「一言目から勝っていた」、舞台を観てそう仰っていたそうですね。

「こんなことってあるんだな」と思いました。というのも、ちょうど「明治座」で公演していたときに、噂話で「何年後かに地球ゴージャスが『明治座』に参戦するらしいよ」というのを聞いていて、「へぇ〜地球ゴージャスが『明治座』でやるんだ!新鮮だし、観に行きたいな」と思っていたら、まさかの自分にお声がかかって。そしてあの舞台を岸谷さんが観ていたことも驚きでしたし。

──まさに夢のような展開ですね。

お声がけいただいて台本をもらったあと、岸谷さんとご飯をご一緒させていただいたのですが、その際に舞台の感想をお聞きしました。ありがたく、うれしいお言葉をたくさんいただいて・・・「頑張って良かったな」と思いましたね。舞台が終わってからは燃え尽きていたのですが、いろんなお話を伺って「早くチャレンジしたい」という気持ちが芽生えてきました。

◆「なぜ自分はここに集められたのか?」

──具体的に「地球ゴージャス」のどこに惹かれたんですか? 高校生のときに書かれたブログには「いつかこの舞台に立ちたい」とあったんだとか。

書いたこと自体忘れていたのですが、情報解禁になってファンの方が見つけてくれました(笑)。でもそこにある言葉は事実で、嫉妬しちゃったんですよね。同じ仕事をしている身として、「なんて楽しそうなんだろう」と思っちゃうくらい、お客さんとのつながりが強くて、団結力にエネルギーを感じました。

当時の心境は、「嫉妬」が説明するには一番合っている気がするし、当時は「ここに来たらこの人たちに会えるんだ、ずっとこの人たちを観ていたい」みたいな気持ちになっていました(笑)。

──となると中川さんは今回、初の地球ゴージャス参戦は相当な熱量なのでは?

役者としても、自分の人生としても、この作品が転換点になるのかなって。むしろそうしたいなと思っています。僕らの仕事は集まっては解散、また集まっては解散という繰りかえしなんですけど、そこに集められた年齢もキャリアもバラバラの方々が、一緒に作品に取り組んでいくといろんな発見があるんです。そうしてまた次に繋げていくというのが、作品ともリンクしていると思っていて。

今回の『儚き光のラプソディ』は、とある場所に集められた人間たちの話で、なぜ自分はここに集められたのか? 何を得て先に進んでいくのか? というテーマがあるので、それを自分の事として考えながら、役者としてこれから30代に向けて取り組んでいけたらいいなと思っています。

◆「僕らの仕事は、職人たちの集まり」

──今後についての話が出ましたが、以前インタビューさせていただいたとき、「俳優だからと線を引くのではなくて、面白いと思うことはどんな形でも参加したい」と仰っていたんです。それは今も変わらないですか?

(どういう立場にいても)常にエネルギー源はお客さんで、「どうやってお客さんを驚かせようか」「どうやったらお客さんが笑ってくれるか」と考えていて、それは映像でも生のエンタテインメントでも同じ。そこを考えているのが楽しくてやっているし、根本にはそれしかないので。誰にも観てもらえなかったらやれない。だからこそ、新しいことをやり続けて「こんなこともできるんだ」と思われたいです。

──2023年の短編映画『アクターズ・ショート・フィルム3』では初の監督業にも挑戦し、初めて「俳優部」ではない携わり方もされました。その経験から、なにか持って帰ってこられたものはありますか?

ゼロから生み出す作業の大変さを少しだけ知ることができましたし、作品を生み出している方々への尊敬をより感じましたね。監督がどういうことをやっているのか、どういう仕事をしているのか、純粋に「知れた」ということは大きいです。あと僕らの仕事は「職人たちの集まり」なので、いろんな世代がいて、それぞれの常識や文化がある。

撮影部だったり、照明部だったりいろんな部署があるなかで、今回監督がどういうことやっているのかを知り、そのなかでも「リスペクトを持ちながらやっていくことが大切なんだ」と学びました。

──ひとつ知ったら、またもうひとつ、とさらに前に進みたくなったのではないでしょうか?

すごく興味はあります。この仕事を始める前から「この仕組みってどうなっているんだろう?」と、裏側にも興味があって、映画のメイキングとかを見るのが好きでした。なので、役者としてだけではなく、別の角度から作品やエンタテインメント作りに関わっていきたいという気持ちもあります。

それを具体的にどういう風にやっていくかというのは漠然としているところもあるんですけど、やりたいことは結局変わらないですね、「どうやってお客さんをびっくりさせるか」ということだと思います。


地球ゴージャス『儚き光のラプソディ』は中川ほか、風間俊介、鈴木福、三浦涼介、佐奈宏紀、保坂知寿、岸谷五朗(作・演出)、寺脇康文が出演。4月の東京公演を経て、大阪公演は5月31日〜6月9日に「SkyシアターMBS」(大阪市北区)にて。チケットは1万3500円で、現在発売中。