「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、BMW 6シリーズ グランクーペだ。

BMW 6シリーズ グランクーペ(2012年:ニューモデル)

以前に[海外試乗記を紹介]したBMWの6シリーズ グランクーペが、早くも日本に導入された。2ドアクーペ以上に美しいスタイリングに、新開発のエンジンを搭載、いざとなれば5人乗れる4+1シーターは、日本ではけっこう役に立ちそうだ。

カッコいいとは聞いていたが、これほどとは! 実車を見ると、そのカッコ良さは想像を超えていた。すでに2ドアクーペとカブリオレのあるBMW 6シリーズに、新たに加わった4ドアクーペのグランクーペ。全長5mを超える伸びやかなフォルムは、とくに横からの眺めが最高に美しい。今や欧州勢の多くがラインナップする4ドアクーペだが、その中でもとりわけスタイリッシュだ。

インテリアも目を見張る。水平基調の5シリーズに対し、6シリーズ共通のセンターコンソールから助手席側のインパネにかけて上昇するデザインや、流れるようなドアトリムのラインは、やはり印象深い。さらにスペシャル感あふれるBMW インディビデュアルのような仕様も選べるし、バング&オルフセン製の1200W & 16スピーカーを持つ高性能システムを装着することもできる。

また、こうしたスタイル優先の4ドアクーペであっても、快適性を求める声が大きいことを受けて、居住性にも大いに注力したのも特徴だ。全高は低く、サイドウインドーはルーフにかけてかなり絞り込んでいるにもかかわらず、そのスタイリッシュさを崩すことなく、室内空間も意外なほど広く確保されている。

いざとなれば3人座れるリアシートは大いにありだろう

リアシートのニースペースはとても広く、シート自体のサイズも大きめ。頭上も上手にえぐってクリアランスを稼いでいる。コンソールで左右が仕切られているため、シート中央に座るとオートバイのタンデムのような格好になるのだが、どうせ使う機会など限られるのだから、これは大いにありだと思う。サンルーフはスライディングできずチルトのみ可能だが、ガラス面積が非常に広く、絶大な開放感を味わえる。

その走りはスポーツカーを凌駕するほど。後輪操舵も行うハンドリングは極めて俊敏で、かつ安定している。ドライブモードを変えると乗り味がハッキリと変わるが、どれを選んでも乗り心地が損なわれないところが素晴らしい。同車は6シリーズの一員だが、チューニングの方向性は、後席の乗員に配慮した5シリーズセダンとの共通性を感じる。

今回試乗したのは、3Lの直6ツインスクロールターボエンジンを搭載する640iで、その完成度も素晴らしい。同型式のエンジンが与えられた535iに対し若干パワースペックが向上しているのだが、実際にもかなり速い。今や貴重になったストレート6のサウンドと吹け上がりは、やはりいいものだとあらためて実感した。

スタイリッシュでエレガントかつスポーティ。BMW 6シリーズ グランクーペの車両価格は高いけれど、その代わり得られるものが大きな1台だ。

●全長×全幅×全高:5010×1895×1390mm
●ホイールベース:2970mm
●車両重量:1860kg
●エンジン:直6 DOHCターボ
●総排気量:2979cc
●最高出力:235kW(320ps)/5800rpm
●最大トルク:450Nm(45.9㎏m)/1300-4500rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・75L
●JC08モード燃費:12.4km/L
●タイヤサイズ:245/45R18
●当時の車両価格(税込):986万円