都市近郊鉱業を舞台に建機自律化の研究が進んでいる。成蹊大学と東京大学はSKマテリアル(埼玉県狭山市)と共同で砕石運搬の自律化を実証した。砕石の山をすくって投入口に入れる単純な作業の自動化だが、人手不足に応える対策になり得る。大規模災害時には遠隔建機として出動し、復興期の膨大な建材需要に応えるなど都市のレジリエンス(復元力)を高めることで、都市と鉱業が共助の関係を築ける可能性がある。(小寺貴之)

「我々の強みは適時適量を提供するサービス力。単純作業の自動化と無人化は競争力になる」とSKマテリアルの齋藤務取締役安全部長は説明する。内閣府・科学技術振興機構(JST)のムーンショット型研究開発事業に、コンクリート用骨材や道路用砕石を生産する吾野鉱業所(同飯能市)を実証フィールドとして提供した。

自動化したのは砕石の山とベルトコンベアへの投入口とをホイールローダーが往復する単純作業。山の形を測ってバケットですくい取り、投入口へ流し込む。人間が操縦するとバケットに砕石が山盛りになり、車両は敷地内を悠々と走る。自動化するとバケットの砕石は目減りし、走行時は障害物の近くで減速し、“おっかなびっくり”に見える。生産性向上にはもう数歩、技術開発が求められる。

この段階の技術にフィールドを提供して開発を促すのは、強いニーズがあるためだ。齋藤取締役は「人手不足対策と安全管理の高度化に無人化は有望。既存の建機を買い換えず、改良で自律化できる手法も必須」と説明する。成蹊大の技術は後付けで建機を遠隔自動化できるためニーズとシーズが一致した。

自動運搬のセンサーデータと走行軌跡。左下の砕石の山から右上の投入口を往復する(成蹊大提供)

実証実験では運搬作業の自動化を実証し、残りはシステムの信頼性などの作り込みに課題が残る。例えばUSB端子の周りでは、ガタガタの路面を走るため衝撃で接続が甘くなりノイズが発生した。東大の永谷圭司特任教授は「産業用コネクターはある。原因が特定できれば解決できる」と説明する。

成蹊大の竹囲年延准教授は実証で「必要なシステム構成と技術の有効性を示せた」と目を細める。信頼性の作り込みは開発技術を事業化する企業の仕事になる。大学と現場が連携し、シーズとニーズがあることは示せた。残りはシステムを作り込み、ビジネスとして成り立たせる事業者の参入が待たれる。

ここで、都市近郊鉱業の自動化が都市のレジリエンスに直結する点が注目される。大規模災害が発生すると危険区域での工事などに遠隔建機が投入される。自治体が遠隔建機を災害用に整備するのは難しいが、協定を結べば平時から稼働する民間機を借りられる。

そして復興期のコンクリート需要は膨大だ。被災後の人手不足は深刻なため、自動化は必須だ。齋藤取締役は「支援制度があれば」とこぼす。技術やビジネスモデルの確立前なら支援策とセットで災害協定を結べる。都市と鉱業に携わる企業の共助を促せるか注目される。