フィギュアスケートの五輪で日本人最多の3つのメダルを獲得している宇野昌磨(26、トヨタ自動車)が9日、電撃的に現役引退を発表した。詳しい引退理由や今後の活動については14日に引退会見が行われ説明されるという。海外メディアも男子シングルで世界ランキング3位にいる宇野の電撃引退を驚きをもって伝えた。

 突然の引退発表だった。所属先からプレスリリースと共に宇野は自身のインスタでも「この度、現役選手を引退する決断を致しました」と報告。「今日まで競技者としての僕を応援してくださった皆様、支えてくださった皆様本当にありがとうございました」と感謝の言葉を伝えた上で「5歳の時にスケートと出会い、21年間続ける事ができ、素晴らしい競技生活を送れたことにとても感謝しております」と続けた。
引退理由については明かされず「僕の想い」や「今後の活動」については5月14日に予定されている引退会見で詳しく語ることを伝えた。
会見の模様は所属しているトヨタ自動車の社内メディア「トヨタイムズ」のユーチューブでライブ配信するという。
浅田真央に憧れてスケートを始めた宇野は、2016年に4回転フリップを世界で初めて成功させ、2018年の平昌五輪の男子シングルで銀メダルを獲得、2022年の北京五輪でも男子シングルで銅、団体で銀メダルを獲得し、フィギュアで日本最多のメダルを獲得した。
2022、2023年の世界選手権を日本男子として初めて連覇する快挙を成し遂げ、全日本選手権は6度優勝した。
今年3月の世界選手権で3連覇に挑んだが、4回転アクセルを成功させた新星のイリア・マリニン(19、米国)に惨敗して4位に終わっていた。自他ともに認める負けず嫌いで常にチャレンジ精神を失わなかった宇野だが、そのモチベーションを維持するのが難しくなったのかもしれない。
現在も男子シングルの世界ランキングでマリニン、世界選手権銅メダルのアダム・シャオ・イム・ファ(23、仏)に次ぐ3位にいるトップスケーターの引退を海外メディアも驚きをもって伝えた。
米NBCスポーツは「2度の世界王者のフィギュアスケート選手の宇野が引退」との見出しを取り、「五輪で3つのメダルを獲得し、2度世界王者となった宇野が26歳での引退を発表した」と伝えた。
同サイトは宇野のインスタグラムでの声明や競技での活躍に触れつつ、「名古屋出身の宇野は5歳で氷上に立ち、その時の練習仲間で、7歳年上の浅田真央を追いかけた。彼は16歳で4回転トゥループをマスターし、18歳で世界で初めて4回転フリップを着氷させたスケーターとなった」と、その軌跡を紹介。
「宇野は2010年代後半に羽生結弦へのトップチャレンジャーに上り詰めた。羽生結弦が引退し、米国のネイサン・チェンが競技から離れた2022年五輪後に彼は世界のトップスケーターとなった」などと続けた。

 五輪スポーツなどを報じる専門サイト「インサイド・ザ・ゲーム」も「2度の世界王者、宇野がフィギュアスケート(の競技)から引退を発表」との見出しを取り、宇野がインスタに投稿した「素晴らしい競技生活を送れたことにとても感謝しております」とのコメントを引用した。同サイトは、「3月にモントリオールで行われた世界選手権で3連覇を目指した宇野は、ショートプログラムでは勝利を収めたが、フリーでは残念な結果に終わり、メダルに届かず4位だった。金メダルは10代の米国選手マリニンで、宇野と同じ日本選手で若い鍵山優真を上回った」と紹介。男子フィギュア界に世代交代の波が押し寄せていたことを示唆し「彼は引退の理由と将来のプランについて話すために5月14日に記者会見を開くつもりだ」などと記した。
米ワシントンポストなど世界の主要メディアが宇野の引退を伝えたが、パキスタンでも話題になった。
パキスタンのテレビ局SAMAAは「宇野がスケート(競技)に別れを告げる」との見出しを取り、「日本の輝かしいスケートの名手、宇野が潔く競技の場から退いた。5歳で初めてスケート靴に紐を通してから20年以上にわたって彩られたキャリアとともに宇野は26歳で氷上に別れを告げた」と伝えた。
同局は「彼の引退発表はスケートの歴史に名を残すことになった世界選手権連覇の後にもたらされた」と紹介。今年の世界選手権で4位に終わったことに触れた上で、引退を決断した理由をこう推測した。
「宇野の最近の奮闘は過去の成功のような揺るぎのない圧倒的なものとはならなかったかもしれない。とりわけ4回転アクセルの申し子、マリニンが、この競技における新たなスタンダードを構築したことを含め、(トップを狙うためには)大変な困難に直面していた」
それでも「一方で彼のレガシーは消えることはない」と称えた。
同局はまた「宇野の偉業は、世界選手権以外にも国際舞台での傑出したパフォーマンスによって彩られてきた」とし、五輪でのメダル獲得の活躍を紹介した。
宇野はすでに今夏のアイスショー出演予定が複数組まれており、今後は、羽生氏と同様にプロスケーターとして活動を続けていくものと考えられているが、引退理由も含めて14日の会見に注目が集まる。