沖縄や奄美で梅雨入りが発表され、本州付近でも空気がジメっと湿気を帯びる季節が近づいてきました。 湿度が高くなると、蒸し暑くなったり、曇りや雨の日が増えたりするため憂鬱だという人は多いかもしれません。ですが、湿度が上がる季節だからこそ、おすすめしたいのが「香りを楽しむ散歩」です。見ごろのバラも、この時季だからこそ香りまで存分に味わえますよ。

近づく雨の季節。空気はジメジメ……湿度がアップ

例年、梅雨が近づく頃になると、少しずつ空気がジメジメと感じられるようになります。

日本付近の海の温度が高くなり、海から暖かく湿った空気が流れ込みやすくなるためです。関東地方など本州の梅雨入りは平年だと6月上旬から中旬ですが、湿った空気などの影響で、梅雨入り前から湿気が増えることが多いのです。

東京の月別の平均湿度(※気象庁のデータを元に筆者作成)。
東京の月別の平均湿度(※気象庁のデータを元に筆者作成)。

湿度が上がると香りを強く感じるのはなぜ?

湿度が上がる季節はやっかいな問題が増えます。お散歩していても、ムシムシとした日は身体に熱がこもりやすく、不快感に悩まされますよね。ですが、湿気があることで普段以上に楽しめるのが「香り」です。

皆さんは、雨上がりにいつもより土や草の香りを強く感じたという経験はありませんか?

湿度が高い気象条件の時は、空気中に水蒸気が多く含まれています。水蒸気が多いと「香り分子」が空気中に留まりやすいため、私達は香りを強く意識するようになるのです。

湿気の多い曇りの日はちょっと憂鬱ですが……。
湿気の多い曇りの日はちょっと憂鬱ですが……。

また、天気の変化も香りの感じ方に影響を及ぼします。晴れている日は太陽の日差しによって地面付近で空気が暖められて、上昇気流が発生しやすくなります。香りは空気の流れに乗って運ばれますが、空気が上空へと向かうため、香りも上へ上へと運ばれて行きます。一方、湿気が多い曇りの日には上昇気流がないため、地面付近に香りが残りやすく、香りを敏感に感じられるようになるのです。

曇りの日は香りが地面付近に留まりやすくなる。
曇りの日は香りが地面付近に留まりやすくなる。

バラの香りを感じる散歩を

5月から6月にかけて、見ごろを迎えるのがバラです。春と秋に花を咲かせる品種が多く、特に春バラは大輪で香りが豊かな花を咲かせるのが特徴です。よく晴れた青空のもとで楽しむのもいいですが、バラの香りを楽しむなら、香りを強く感じられる湿度の高い曇りの日を、あえて狙ってみるのはいかがでしょうか?

春バラの上品な香りに癒やされてみて。
春バラの上品な香りに癒やされてみて。

香りをかぐときは、バラのすぐ近くまで顔を寄せて鼻から勢いよく嗅いでみてください。上品で優雅な香りは、バラの種類によって微妙に違います。

色とりどりのバラが見ごろを迎えている。
色とりどりのバラが見ごろを迎えている。
ゴージャスな見た目の春バラ。
ゴージャスな見た目の春バラ。
種類によって違う香りを楽しもう。
種類によって違う香りを楽しもう。

カラフルなバラが引き立つ記念写真を撮影するなら、自分の服装はモノトーンや暗めの色などを選び、シンプルな印象に仕上げるのがおすすめです。

さんたつユーザーの多い首都圏では、2024年は、例年より早く見ごろを迎えているところがあるため、梅雨入り前に急いでお散歩へ出かけましょう。

また、バラのほかにも梅雨時に見ごろを迎えるクチナシの花も、魅力的な香りを漂わせます。可憐な姿と甘い香りは梅雨のジメっとした空気に清涼感を与えてくれますよ。

あえての曇りの日を狙うなら「天気分布予報」を活用しよう

あえて曇りの日を狙うなら、活用したいのが「天気分布予報」です。

天気のマークだけでは分からない細かな天気の傾向が分かります。天気分布予報では、3時間ごとの代表的な天気を「晴」「曇」「雨」「雨または雪」「雪」と色分けして表示しています。

曇りの日は、雨雲が近づいていることもあるため、天気分布予報でいつ頃、雨が降り出すかも確認しておくと安心です。

エリアごとに細かく天気が分かる「天気分布予報」(※出典:気象庁)。
エリアごとに細かく天気が分かる「天気分布予報」(※出典:気象庁)。

湿気の増える季節は不快感を感じることもありますが、そんなときこそ花や草木など植物の香りを楽しむ散歩に出かけてみてください。香りに心癒やされて、憂鬱な季節も前向きに乗り切りましょう。

 

文=片山美紀 写真=片山美紀、気象庁

参考
岩槻秀明『新 散歩の花図鑑』新星出版社
気象庁「東京(東京都)平年値(年・月ごとの値) 詳細(気温・蒸気圧・湿度)」
https://www.data.jma.go.jp/stats/etrn/view/nml_sfc_ym.php?prec_no=44&block_no=47662&year=&month=&day=&view=a2

気象庁「天気分布予報」
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kurashi/bunpu.html

ウェザーニュース「これからの時期は特に感じる!?ニオイと天候の関係」
https://weathernews.jp/s/topics/201805/090205/

片山美紀
気象予報士
大阪府出身。大学卒業後、放送局での勤務を経て気象予報士、気象キャスターに。街歩きをしながらお天気ネタを探すのが趣味。空を眺めようと上を向きがちです。NHK総合「首都圏ネットワーク」などに出演中。