防衛省は9日、海上自衛隊の護衛艦「いずも」をドローン(無人機)で空撮したとする動画について、実際に撮影された可能性が高いとの見方を示した。いずもが停泊する海自横須賀地区は無許可のドローン飛行が禁止されており、海自が厳重に監視しているにも関わらず、ドローンの侵入を許したことで、警戒体制の不備が露呈した。

同省は当初、偽動画である可能性を示唆していた。木原稔防衛相は動画が拡散され、話題に上り始めた4月2日の記者会見で「悪意を持って加工、捏造されたものである可能性を含め分析中だ」と述べていた。

同地区周辺は原則、ドローンの飛行が禁止され、平時から海自が警戒している。一般的に操縦者とドローンの間で交わされる電波を検知するなどしてドローンを探知。違法に飛行している場合は電波妨害による強制着陸や網を投射して捕獲するなどして対処する。

防衛省は問題のドローンを探知していたかどうか明らかにしていない。酒井良海上幕僚長は4月の記者会見で「電波を探知すればそれなりの対応はとれる」と対処能力に自信をのぞかせていたが、警戒網をすり抜け、いずも上空を飛行した可能性が高い。

ドローン関連技術は急速に発展し、軍事分野でも存在感を増している。ロシアによる侵略を受けるウクライナは、大規模なドローンによる攻撃が主要な抵抗手段の一つになっている。

自衛隊施設に攻撃の意図を持ったドローンが容易に接近できるようであれば、防衛上甚大な被害を受けかねない。

9日の自民党国防部会などの合同会議では警戒体制を懸念する声が相次ぎ、小野寺五典元防衛相は「このような動画を撮られてしまったことは安全保障上の重要な問題だ」と述べた。

防衛省はより能力の高い対処機材を早期に導入するなどし警備能力を向上させる方針だが、実効性のある対策が急務だ。(小沢慶太)