ロッテファンの誰もが待ち望んでいた男が帰ってきた。右肩痛の影響などで離脱していたロッテ髙高部瑛斗外野手(26)が、5月18日の日本ハム戦で2年ぶりに1軍復帰。盗塁王とゴールデングラブ賞を受賞した2022年は、コロナ禍で鳴り物や声を張り上げての応援は禁止で、初めて大歓声に包まれたZOZOマリンスタジアムでの復活に感慨深いものがあった。

「けがをしているときは先が見えなかった。つらくて先も見えない感じがあって本当に途方もない感じでした。全部久しぶりだったので、長かったなと思ったのと、すごい歓声というか声を出してくれてそれがすごくうれしかった」

1軍に昇格したこの試合の六回に代走で途中出場し、同点のホームを踏む。八回に復帰初打席に立つと二塁打でチャンスを作り、ダメ押し点をもたらした。

長くて暗いトンネルだった。昨年3月に右肩を肉離れし、開幕に出遅れると、4月にも右肩を痛めるなど状態が上がらず。9月には胸郭出口症候群と診断され、右肩の第一肋骨切除術を受けた。シーズン中の復帰はかなわず、22年には137試合に出場しながらも昨季は1軍出場なしに終わった。

どん底を味わいながらも前だけを向いていた。「僕が苦労していた指のしびれとか筋肉の肉離れは、感覚さえ良くなってくれれば自然とよくなるとお医者さんから言ってもらっていた。(手術を受けて)一度もしびれがなくここまで来られています」。家族やスタッフに支えられ、チーム内で多くけがの経験がある荻野にはストレッチの仕方や肩甲骨の動かし方などの助言をもらい、今季の完全復活を目指してコツコツとリハビリをこなした。

今年3月のオープン戦では打撃で出場できるまでに回復。ただ、けが前との体の違いに戸惑った。「体が今までと同じではない。そこがやっぱり全然違った」。開幕後は2軍で守備にも就くようになり、徐々に強度を高めていく中でサブロー2軍監督や1、2軍の打撃コーチに相談しながら新たな打撃の感覚を掴むために努力した。

「試合勘もそうですけど、手術をして違う体になった自分というのをしっかりと受け入れられていない部分もあった。その違った部分も含めて自分のイメージを合わせないといけない」

取り組んできた時間は成果として現れた。1軍復帰4戦目となった22日の西武戦では3安打1四球で全打席出塁し、今季初の盗塁も記録。復帰初戦のあと3試合連続で先発起用した高部に、吉井監督は「彼は固め打ちの名人みたいなところがある。足が速いので、クリーンヒットだけじゃなくて打ち損じもヒットになる可能性がある。そういった意味では相手にプレッシャーがかかっている」と目を細めた。

まだまだ今季は始まったばかり。高部は「まだ(昨年が)無駄ではなかったとは思えないですけど、この先活躍をしたり、どんどん試合に出ることによって無駄ではなかったと思える。これからの僕次第だなと思います」と口にした。止まっていた歯車が、再び動き出した。(森祥太郎)