4月のドジャースタジアム。ドジャースの大谷が打席に入る度に、映画「ゴジラ」のテーマ曲がオルガン演奏された。松井秀喜(ヤンキースなど)に並ぶ日本選手最多175号本塁打、そして新記録更新を迎えるまで、何度も演奏され、その度に球場のボルテージは最高潮に達した。

 「翔平は我々の想像を超える活躍をいつもやってのけます。ゴジラの曲はみんな気に入ってくれていたでしょうか?翔平のプレーを見るのがいつも楽しみです」

 演奏していたのは7代目のオルガン奏者ディーター・ルールさん(55)。16年に前田(現タイガース)とともにドジャースに“入団”し「ゴジラ」以外にも「上を向いて歩こう」、「セーラームーン」、「進撃の巨人」、「呪術廻戦(じゅじゅつかいせん)」など人気アニメのテーマ曲もレパートリーの一つだ。

 「日本メディアからいつも意見を聞いて参考にしている」と語り、「ゼルダの伝説」、「ドラゴンクエスト」など人気ゲームのテーマ曲もお手の物。7日のマーリンズ戦では山本の愛称「ヨシ」にちなみ「スーパーマリオ」のキャラクター「ヨッシー」のテーマ曲を演奏して場内を盛り上げた。現在、練習中の曲は大谷の好きなアニメの一つ「鬼滅の刃」のテーマ曲だという。

 「ある曲を認識できないファンがいたとしても、次の曲を認識する可能性があります。いろいろなジャンルの曲や楽しい曲を演奏するように意識しています。一緒に手拍子したり、いつもファンの方々に球場で楽しい経験を提供できることを願っています」。ルールさんはオルガン演奏だけでなく、チャンス時の「Clap Your Hands」などの演出音も操作。勝った後に流れる「I Love L.A.」もルールさんがスイッチを入れている。ドジャースタジアム以外にも、カブスの本拠地リグリー・フィールドなどオルガン演奏が名物のメジャー球場は複数あり、ルールさんは「どんな演奏でしたか?」と記者への“逆取材”を行うなど、日々研究を怠らない姿が印象的だ。

 ドジャースは7日(日本時間)時点で今季最多の貯金12の地区首位と絶好調。「素晴らしいレギュラーシーズンを送っていますが、プレーオフは何が起こるか分かりません。ただ、今年のチームはワールドシリーズに行く可能性は高いと思っています」。20年以来、4年ぶりのワールドシリーズ制覇へ。選手だけでなく、ルールさんのようなスタッフも一丸となって戦っている。(記者コラム・柳原 直之)