柔和な笑顔から飛び出した力強い言葉に驚いた。3日巨人戦に今季初先発し、3回6安打6失点と打ち込まれプロ初黒星。今季2軍で3試合に登板し、16イニングでわずか2失点だった阪神・門別が、改めて1軍のすごさを痛感した瞬間だった。だが満を持してマウンドに上がっただけに気落ちしているかも…という心配は最初のひと言で杞憂(きゆう)に終わった。

 「プロになって初めて打ち込まれたというか、ああいう経験をして悔しいというよりもすぐ、やり返したい気持ちになった」

 このハートの強さこそが岡田監督がほれ込み、将来のエース候補として期待されるゆえんなのだろう。視線はすでに次戦を見据えていた。落ち込んでいる暇なんてない。朝から元気にあいさつし、首脳陣と笑顔で練習に励む姿からも、そう感じた。「キャッチャーとの配球だったりコミュニケーション、ボール以前にできることがある」と課題も明確になっていた。

 「悪いときも悪いときなりに変化球を使ったり配球もいろいろできる。そういうところはしっかりできれば」

 試合前日も当日も緊張はなく普段通りにマウンドに上がった…つもりだった。だが19歳にとって敵地での登板は想像以上だった。2死から吉川に6球粘られ中前二塁打を浴び、そこから4失点。「2アウトを取ってからああやって結構打たれて勝手に焦ったというか…」。巨人打線の勢いを止められず、2回には岡本和に2ランも許した。「そこ(梅野との事前の会話)はまだ足りていなかった」とコミュニケーション不足を痛感した。

 試合後すぐに宿舎で話し合った。梅野の部屋へ行き、スコアを見ながら「2人でその部分(コミュニケーション)をもっとちゃんとできれば良かったね」と確認。梅野からの「悔しいのは俺も一緒だから」という言葉に顔を上げ「悔しがっている場合じゃないなと思いました」と切り替えた。

 降板後はベンチから先輩の堂々とした姿を目に焼きつけた。4回以降、岡留と浜地が2イニングずつを無失点。「状況を分かっている。1本出ても焦らないで、しっかり次のバッターを見ていたり自分と全然違う」。大山、中野の本塁打に自然と声も出た。真っすぐ前を見る門別に、岡留は「次はしっかり投げてくれるはず。大丈夫です」と話し、浜地も「僕の初登板の時も覚えていないくらいあたふたした。生きると思います」とエールを送った。

 「早くまた1軍で投げられるように」。プロ初勝利、そしてその先へ。門別は、すでに走り出している。(杉原 瑠夏)