サラリーマン・三上悟がスライムのリムル=テンペスト(CV:岡咲美保)として異世界に転生、さまざまな種族が共に暮らせる理想の国作りに奮闘する「転生したらスライムだった件」(毎週金曜夜11:00-11:30ほか、日本テレビ系ほか/ABEMA・ディズニープラス・FOD・Hulu・TVerほかで配)。2021年以来となるTVアニメシリーズ第3期では、「魔王達の宴(ワルプルギス)」を経て正式に魔王となったリムルの元へ、魔物を敵視する神聖法皇国ルベリオスの聖騎士団長・ヒナタ(CV:沼倉愛美)が訪れる「聖魔対立編」が描かれる。第54話(第3期6話目)は、ヒナタたちのテンペスト来訪に備えるリムルたちの動向を描いた「迫り来る者達」。(以下、ネタバレを含みます)

■久々登場のアダルマンが会議の中心に

テンペストでは再び幹部たちが集まって会議中。ヒナタたちがルベリオスを出発してテンペストへと向かっていることや、使者としてルベリオスに送ったレイヒム(CV:藤井隼)が何者かによって殺害されたことなどを受け、会議はやや緊張感の漂う雰囲気に。レイヒム殺害の件について、計画した自分の落ち度だと落ち込むディアブロ(CV:櫻井孝宏)だったが、リムルは「失敗した時は、それをどうやって挽回するかが大事なんだ」と励まし、引き続きディアブロに計画を任せるのだった。さらにリムルたちは西方聖教会の内情を探るため、元枢機卿のアダルマン(CV:杉田智和)を呼び、「聖騎士団(クルセイダーズ)」や「法皇直属近衛師団(ルークジーニアス)」、「七曜の老師」の関係、さらには「十大聖人」と呼ばれる強者たちの存在を知ることとなる。

クレイマン(CV:子安武人)の部下として登場し、シュナに敗れたことで配下に加わったアダルマンが今シーズン初登場。元枢機卿ということもあり、西方聖教会の歴史を意気揚々と話してくれた。初対面のリムルに対して最上級の敬語を使って長々と挨拶するも、それにうんざりしたシュナからは笑顔で怒気を飛ばされるなど、なかなか憎めないキャラクターだ。ただ、この過剰にうやうやしい態度についてはディアブロとシオン(CV:M・A・O)から高く評価されるなど、どうやらまたひとり、リムル崇拝者が増えた模様。SNSでも「アダルマン、ディアブロたちと気が合いそうw」「ほんと良いキャラしてるなあ」などの声が寄せられていた。ちなみにアダルマンは「七曜の老師」の罠にハメられた過去があるようで、それまで淡々と語っていたアダルマンの口調が、この時だけは本気の恨み節へと変わるのが面白い。アダルマンの一連の長セリフは、声優の力量も光ったシーンだった。

■新キャラクター・ゴブアの登場に「可愛い!」と反響

各人からの情報が出揃ったところで、改めてテンペスト側の対応を考えるリムルたち。およそ3万人と予想を超える規模となったファルムス王国新王の勢力に対し、なるべく双方に被害を出したくないと考えるリムル。幹部たちはそんなリムルの意向を汲み取り、次々と的確な対応策を講じていく。しかしそこへ、ヒナタたちとは別に聖騎士団(クルセイダーズ)100騎がテンペストに向かっているとの情報が入る。思わぬ新勢力の登場に頭を悩ませるリムルだったが、ヒナタが対話を望んでいる可能性に賭けたリムルは、聖騎士団(クルセイダーズ)にも被害を出さないよう対応することを決意。聖騎士団(クルセイダーズ)100騎は「紫克衆(ヨミガエリ)」を率いたシオンが、「紅炎衆(クレナイ)」のサポートをうけながら相手をすることとなり、さらにヒナタと同行している4人に対しては、ベニマル(CV:古川慎)、ソウエイ(CV:江口拓也)、アルビス(CV:加隈亜衣)、スフィア(CV:大地葉)の4人が相手をすることに決定した。

ファルムス王国やヒナタたちに対し、あくまで双方の被害を最小に抑えようと模索するリムルの優しさが印象的。対話の意思があるかもしれないヒナタはともかく、明らかに敵対する気満々のファルムス王国に対してですら、無関係の人を巻き込みたくないと考えるリムルは為政者としては甘いのかもしれないが、そんなリムルの決断に対し、一切の異を唱えることなく策を講じていく幹部たちがじつに頼もしい。多様な種族が集まるテンペストだけに、それらを束ねるのに必要なのは圧倒的な力だと思ってしまいがちだが、じつのところはその逆で、寛容さや器の大きさでまとめ上げているのがテンペストの特徴だろう。またここでもうひとつ注目だったのは、新キャラクターのゴブア(CV:永瀬アンナ)だ。ベニマルが指揮する紅炎衆(クレナイ)の隊長として登場し、セリフこそ少なかったものの気合いの入った特徴的なビジュアルは存在感たっぷりで、SNSでも「ゴブア来たー!」「思った以上に可愛い!」「絶対に有能そう」と話題となっていた。今回の編成でシオンの下についたゴブアだが、今後の活躍に期待しよう。

■さらなる新勢力「ロッゾ一族」が暗躍

一方、舞台は変わって西側諸国のとある屋敷内。ロッゾ一族の首領・グランベル(CV:小野大輔)は、マリアベル(CV:水瀬いのり)と共に、五大老、東の商人・ダムラダ(CV:浪川大輔)、法皇直属近衛師団(ルークジーニアス)のグレンダ・アトリー(CV:日野まり)と密談していた。ダムラダの狙いは西側諸国の混乱、グランベルの狙いはファルムス王国の傀儡化と、ふたつの組織の最終的な目的は異なるものの、「対リムル」の対応では一時的に手を組むこととなる。

前話の両翼会議にて、近衛師団の一員として会議に参加していたグレンダだが、じつはロッゾ一族の内通者としてルベリオスの中枢に潜り込んでいたことが判明する。さらにはここでもグランベル、マリアベル、ダムラダ、五大老など新キャラが続々登場。とくに印象的なのはマリアベルで、少女のような外見ながらもすでにグランベルを操っており、底知れぬ知略を感じさせる。今後、目が離せないキャラクターのひとりかも知れない。またこのシーンが少しややこしく感じるのは、彼らがどこかの国のトップというわけではなく、この世界全域で自らの一族、あるいは組織が繁栄するように暗躍しているところ。ユウキ・カグラザカ(CV:花江夏樹)が率いる「中庸道化連」やヒナタの属する「西方聖教会」、あるいは「魔王たち」もそうかもしれないが、単純な国と国の交渉を超える存在が大きく絡んでくるところが『転スラ』の特徴で、それが先の読めない展開という魅力に繋がっている。権謀術数が飛び交い、しっかりと聞いておかないとあっという間に取り残されてしまうこの感覚はミステリーやサスペンスに近く、改めて『転スラ』が異世界ファンタジーの皮をかぶった政治・戦略ドラマなのだと実感できる話数となった。さて次回第55話(第3期7話目)「聖魔激突」は5月17日(金)放送予定。期待して待とう!

■文/岡本大介