芸能事務所の倒産が相次ぐ中、VTuber事務所が躍進を見せている。「ホロライブプロダクション」を運営しているカバー社(東京・港区)が13日、声明を発表し、東証で新興企業向けのグロース市場から最上位のプライム市場への〝昇格〟に向けた準備をしていると報告した。プライム市場を目指す理由は「当社の中長期的な成長」「企業価値のさらなる向上の実現」と説明。2016年設立の同社は、人気VTuberの星街すいせいらで知られ、コロナ禍が明けて巣ごもり需要がひと段落しても好調な売り上げをみせていた。

「芸能事務所がテレビ局に引きずられるようにパワーダウンする中、VTuber事務所はユーチューブでの海外展開に成功しています。『VTuber』という文化自体はまだメジャーではないため今後、無限に近いマネタイズの可能性を秘める。海外市場を席巻した場合、数千億円の売り上げを見込む試算もあります」(IT企業関係者)

 カバー社を率いるのが、慶応大出身の代表取締役社長CEO谷郷(たにごう)元昭氏。前出IT関係者は「一言で言うなら『ヤリ手』」と指摘する。

「谷郷氏は20年に開催したライブで成功を収め、事業を一気に加速させました。ただ、当時は会社設立からまだ5年目。今ほどの地力はなく、ライブが失敗した場合、主要事業が傾くリスクすらあったようです。最終的に自身も身銭を切る覚悟でライブの開催を決断。これが功を奏し、現在の展開につながりました」(前出IT関係者)

 リスクを背負って勝負に出た賭けに勝ち、事業を軌道に乗せたといえる。

 一方で、一部芸能事務所が苦境にあえいでいるのは周知の通りだ。

 帝国データバンクの6日発表によると昨年、芸能事務所の倒産は12件発生し、これは過去5年間で最多の数字だったという。タレントの壇蜜らが所属したフィットは破産手続き中で、女優の吉岡里帆(31)らが所属したエー・チームは芸能関係業務を休止した。

 芸能事務所とVTuber事務所は今後、しのぎを削っていくか、それとも共存していくか。