【記者が振り返る懐かしのベストレース】雨に煙る東京競馬場。目の前のワンサイド圧勝にあぜんとしつつも、着順掲示板に光る「5」でさらに驚いた。1、2着馬の着差=5馬身。芝の中長距離GⅠでは、これぐらいの着差はよくあること。ただ短距離、マイルではほとんど見られない数字だ。それほど04年の覇者キングカメハメハは強かった。
歴史が浅いNHKマイルCではもちろん最大着差。同時期の安田記念(GⅠ昇格後)を見ると、2馬身半(94年ノースフライト、98年タイキシャトル)が最大だった(ちなみに安田記念近4年はすべて首差)。短距離の高松宮記念&スプリンターズSでの最大着差は4馬身…いかにキングカメハメハが抜けた能力を持っていたかが分かる。
「これでダービーも大丈夫でしょう」。慎重居士の安藤勝にしては珍しく?レース後のコメントがストレートだったのは印象的。その言葉通り、4ハロン延びた同じ舞台での3歳頂上決戦を制して変則2冠王…馬名通りの強さを見せつけた。
屈腱炎でその秋に引退を余儀なくされ通算8戦7勝。ディープインパクトと同じで1回しか負けなかった。この怪物ホース、もし無事ならNHKマイルの倍の距離の天皇賞も勝てたのでは、と今でも思っている。(2006年5月3日付東京スポーツ掲載)
著者:東スポ競馬編集部