ウオッカの独壇場だった09年ヴィクトリアマイル
ウオッカの独壇場だった09年ヴィクトリアマイル

【記者が振り返る懐かしのベストレース】06年に新設され、第2回コイウタ(12番人気)、第3回エイジアンウインズと続いた一発屋の優勝はレースに“お手軽感”を植え付けてしまったが…。この空気を一気に変えたのが、前年2着のリベンジを果たした09年の優勝馬ウオッカだった。

 格は与えられるものではなく作るもの。名牝の制覇は世間にそれを知らしめ、かつ自身の誇りを取り戻すにも十分な完勝劇であった。

 中団待機で2着に敗れた前年のテツは踏まない。そんな武豊の気迫が、レースではポジショニングに表れた。「しっかり(スタートを)押して出たのでひっかかるんじゃないかと思った」と管理する角居調教師も驚く好位を取りに行く積極策。それでも前半4ハロン46秒7の淡々としたペースをしっかり折り合い、4角で早々と先行馬を射程圏に捕らえてみせる。

「内にいたので、スペースのあるうちに半馬身でも(進路確保のために)入っておこうと。それが一瞬で抜け出してしまった」と武豊が振り返った通り、以後は後続を突き放す一方の独壇場。2着ブラボーデイジーにつけた着差は7馬身――。まさにウオッカによるウオッカのための舞台…そんな言葉がピッタリの圧勝劇だった。

 ウオッカは続く安田記念、秋にはジャパンCも制して、この年“府中の申し子”ぶりを存分に発揮。翌年ドバイで鼻出血を発症し引退→繁殖の運びとなったことを踏まえると、満開の花を咲かせた瞬間とも言える。

 やがて出現する圧勝馬に対し、おそらく用いられるフレーズは“ウオッカ級”。そんな歴史を作ったこのレース、先々までベストレースとして語り継がれるに違いない。(2010年5月12日付東京スポーツ掲載)

武豊ウオッカ衝撃の7馬身差V!「一瞬で抜け出してしまった」【2009年・ヴィクトリアマイル】

著者:東スポ競馬編集部