松本氏の辞任でまず懸念されるのは、現在進めている経営統合への影響だ。

ウエルシアHDは今年2月末、業界2位のツルハHDと経営統合の協議を開始すると発表した。ウエルシアHDがツルハHDの子会社になるいびつなスキームではあるものの、松本氏はウエルシアHDの代表として議論を進めてきた。2兆円規模のドラッグ連合実現を目指し、足元では独占禁止法上の問題点の解消を試みている最中だった。

松本氏は長らくツルハHDやイオンの経営陣と関わってきたキーパーソンだ。イオン、ウエルシアHDやツルハHDなどが医薬品のPB(プライベートブランド)を共有するハピコムグループのメンバー各社で3カ月に1度集まり、商品や薬剤師の教育について情報交換をしてきた。松本氏もその場でツルハHDの鶴羽順社長などと意見を交わしてきた。

そんな松本氏の辞任で、経営統合の協議に混乱が生じないか懸念される。「今のところは社長職を兼任する池野(会長)が中心となり、影響がないように進めていきたい」(ウエルシアHD広報)。

店舗の差別化策を進めてきたが…

もう1つの懸念が、店舗戦略の行方だ。ウエルシアHDが主戦場とする郊外は現在、人口減少とオーバーストア状態に悩まされている。1店舗当たりの採算性が低下し、打開策を求められている状況だ。

そこで松本氏が掲げてきたのが「健康ステーション」構想。ウエルシアHDが抱える8000人超の薬剤師を核として、健康や美容に関する悩みを何でも相談できる店舗をつくるという。薬剤師が調剤薬局の業務だけでなく、OTC(一般用)医薬品やサプリメントなどのカウンセリング販売を行える体制を目指している。

業界の枠を超えて、医療や介護の領域を巻き込んだビジョンも描いてきた。例えば、ドラッグストア店内で医療機関の遠隔診療を受けられるようにしたり、在宅医療を受ける患者向けの調剤業務を担当したりと、他の医療法人との連携を深めていく方針だ。