自社で展開する介護事業は採算性の低さに悩まされてきたが、同業のM&Aや、イオングループ内での統合も視野に挽回すると打ち出した。ドラッグストアを軸に介護や医療のサービスも提供することで、競合と差別化するというわけだ。

さらに、2023年3月にはたばこの販売中止を発表。前期は400店舗で取り扱いを中止し、残りの店舗でも順次販売を取りやめるという。

昨年12月に実施した東洋経済のインタビューで、松本氏は「ドラッグストアはどこでも同じで、欲しいものが安ければよいというのでは不十分。健康に対するサポート、アドバイスをあらゆる面から行える存在になりたい」と語っていた。

キーパーソンが退場、店作りは道半ば

オーバーストア状態が指摘される中でも、業界の出店競争は激化している。業界4位のコスモス薬品は2023年5月期に114店純増となったが、ウエルシアHDは2024年2月期に62店純増と見劣りする。

出店数に加えて、既存店の売上高伸長率も、食品の安売りを軸に客数を伸ばすコスモス薬品に軍配が上がる。競合に対抗できる店舗づくりはウエルシアHDが直面する重要課題だ。

多様な店舗戦略を進め、クリーンな企業イメージの形成にも努めてきた中、今回の不倫騒動が明るみになってしまった。競合幹部からは「1兆円企業の社長として脇が甘かったのではないか」と冷ややかな声が上がる。

理想の店づくりは道半ばだ。松本氏の辞任で会社の経営方針は揺らぎかねない。ウエルシアHDは早急に後任を決定し、経営統合や店舗改革に臨む必要がある。

著者:伊藤 退助